さまよえる脳髄

さまよえる脳髄

逢坂剛による推理小説『さまよえる脳髄』は、新潮ミステリー倶楽部から書き下ろしで刊行されました。医学的な見地から人間心理に深く切り込んだミステリーであり、精神医学者である福島章は、その医学的正確性と論理的な構成を高く評価しています。

1993年にはテレビドラマと映画化もされましたが、それぞれストーリーや設定が異なっています。

あらすじ

プロ野球のエースである追分知之は、完全試合目前で交代を告げられた際、リリーフカーを運転していたマスコットガールに突如として襲いかかり、首を絞めてしまいます。殺人未遂で起訴されたものの、精神科医の南川藍子の鑑定により、事件当時、追分は心神喪失状態であったと判断され、無罪となります。

しかし、脳神経外科医長の丸岡は別の見解を持っていました。追分の脳には、未だ解明されていない闇が潜んでいるのではないかと疑念を抱きます。一方、藍子は恋人である海藤の行動に異変を感じ始めます。彼は左側のものに対する認識が極端に鈍くなっていたのです。過去の事件で頭部に傷を負った海藤の脳に、何らかの影響が出ているのではないかと心配した藍子は、丸岡に相談を持ちかけます。

そんな中、世間では制服を切り裂かれた女性が、裁ちばさみで刺殺されるという連続殺人事件が発生。海藤の同期である遊佐らが捜査に奔走します。事件の真相を追ううちに、藍子、海藤、そして追分の運命が複雑に絡み合っていくことになります。

登場人物

帝国医科大学付属病院・関係者

南川 藍子（みなみかわ らんこ）
精神神経科の医師で主任兼医長補佐。35歳、独身。
丸岡 庸三（まるおか ようぞう）
脳神経外科医長。50代半ば。
鳴海
産婦人科の医師。
柴崎 信二
帝国医科大学が契約している営繕会社の営業課長。52、3歳。
福島 勝巳
帝国医科大学付属病院のボイラーマン。40代前半。
白石 笑美（しらいし えみ）
帝国医科大学付属病院の看護婦。30歳。

警察関係者

海藤 兼作（かいどう けんさく）
37歳。警視庁防犯総務課。藍子の恋人。
木村 宏
麻薬取締官。
遊佐 耕一郎（ゆさ こういちろう）
警視庁捜査一課。海藤の同期。
増山 清八
北品川署の刑事。

その他

河津
木村宏が使っているタレコミ屋。
滝本 貞明
東柳組の幹部。
浜野 環樹（はまの たまき）
ロック・バンドのリーダー。
追分 知之（おいわけ ともゆき）
プロ野球のエース。30歳。
小早川 緑
女優。41歳。追分とは顔見知り。
北野 紫津（きたの しづ）
長崎にあるバーのママ。30前後。
本間 保春（ほんま やすはる）
40過ぎ。ギタリスト。
今西 涼子
デート・クラブのコールガール。
橋詰 登美子
国内線専門の会社で働くスチュワデス。30過ぎ。

書籍情報

単行本：新潮社、1988年
文庫：新潮文庫、1992年、解説：福島章
文庫：集英社文庫、2003年、解説：末國善己

テレビドラマ

1993年2月11日、読売テレビ「ドラマシティ'93」で放送。

映画

1993年12月4日公開。主演：神田正輝。

関連項目

ロボトミー
フロイト
シンクロニシティ
無視症候群
脳梁
ミルグラム実験
* 月経前症候群

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