さや侍

映画『さや侍』の詳細解説

『さや侍』は、2011年に公開された松本人志監督の3作目の映画作品です。この作品は、従来の時代劇の枠にとらわれない独特な設定と、予測不能な展開が魅力のコメディ時代劇です。

制作の背景

主演には、演技経験のない一般人である野見隆明が抜擢されました。彼は、松本が出演していたテレビ番組『働くおっさん人形』で共演したことがきっかけで選ばれましたが、撮影にあたっては、映画の撮影であることや監督が松本であることなど、一切を知らされていませんでした。野見は、「映像として残すDVDソフトの制作」という名目で撮影に参加し、台本も渡されないまま、共演者とも会話を禁じられた状況で撮影が進められました。この異例の制作方法は、松本監督の意向によるもので、野見の自然な反応を引き出すためのものでした。

物語の概要

物語は、脱藩浪人である野見勘十郎が、ある出来事をきっかけに刀を捨て、鞘だけを持つようになったことから始まります。彼は娘のたえと共に逃亡生活を送る中、多幸藩に捕らえられてしまいます。そこで藩主から、若君を笑わせるという「三十日の業」を言い渡されます。これは、一日一芸を披露し、30日以内に若君を笑わせることができれば無罪放免、できなければ切腹という、奇妙な試練でした。勘十郎は、娘のために、様々な芸を披露し、若君を笑顔にしようと奮闘します。

キャスト

野見勘十郎：野見隆明
刀を捨てた侍で、通称「さや侍」と呼ばれます。逃げてばかりのふぬけな性格ですが、娘のために「三十日の業」に挑みます。
たえ：熊田聖亜
勘十郎の娘。幼いながらも武士の心得を重んじ、父を諌めるしっかり者です。
三味線のお竜：りょう
賞金稼ぎの女性。三味線に仕込み刀を隠し持っています。
二丁拳銃のパキュン：ROLLY
賞金稼ぎの男性。お竜に好意を抱いており、お調子者な性格です。
骨殺師ゴリゴリ：腹筋善之介
賞金稼ぎの男性。腕力で相手を殺める人物です。
若君：清水柊馬
藩主の跡継ぎ。母の死後、笑顔を失ってしまいます。
多幸藩家老：伊武雅刀
規律に厳しく、実直な性格の人物です。
多幸藩藩主：國村隼
変わり者として知られる藩主。金平糖を好みます。
門番の倉之助：板尾創路
勘十郎の見張り役ですが、優しい性格でアドバイスをします。
門番の平吉：柄本時生
勘十郎の見張り役。いつも口が開いています。
托鉢僧：竹原和生
城下町で托鉢をしています。

「三十日の業」について

多幸藩では、捕らえられた罪人が若君を笑わせるという独特の試練が課せられます。罪人は毎日、芸を披露し、若君が笑えば無罪放免となりますが、笑わせることができなければ切腹となります。この奇抜な設定が、物語に独特の緊張感とユーモアをもたらしています。

作品の評価

『さや侍』は、その独特な作風から、賛否両論を呼びました。一部からは、その斬新な設定やコメディ要素が評価された一方で、厳しい批評も受けました。しかし、その独自性から、多くの観客に記憶される作品となりました。また、国内外の映画祭でも上映され、その存在感を示しました。

スタッフ

監督・脚本：松本人志
音楽：清水靖晃
撮影：近藤龍人
照明：藤井勇
美術：愛甲悦子
編集：本田吉孝
配給：松竹

まとめ

『さや侍』は、松本人志監督ならではの独特な世界観が詰まった作品です。主演の野見隆明をはじめとする個性的なキャストや、「三十日の業」という奇抜な設定が、観客を魅了します。従来の時代劇のイメージを覆す、異色のコメディ作品として、記憶に残る一作です。

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