さんふらわあ きりしま (初代)

さんふらわあ きりしま（初代）: 地中海の風を感じさせるフェリー

1993年8月26日、フェリーさんふらわあの新たな航路を開拓すべく就航した「さんふらわあ きりしま」（初代）は、三菱重工業下関造船所で建造されたフェリーです。当初は大阪―志布志航路をメインに運航していました。同型船2隻のテーマは「地中海の風」。本船は南フランスをイメージした、白を基調とした明るく開放的な船内空間が特徴でした。

就航当初から人気を博した「さんふらわあ きりしま」ですが、その活躍の場は大阪―志布志航路だけにとどまりませんでした。1997年から1999年にかけては、東京―大洗―苫小牧航路にも投入され、幅広い地域を繋ぐ役割を担っていました。2000年には運営会社の再編を経てブルーハイウェイライン西日本の所有となりました。その後、関西汽船とダイヤモンドフェリーの統合により、2009年11月1日からはフェリーさんふらわあによる運航となりました。この際に、船体のファンネルマークもダイヤモンドフェリーの頭文字「D」からオレンジ一色に変更されています。

2017年には、大阪港の発着地がかもめフェリーターミナルからコスモフェリーターミナルへと移転。その後継船である2代目「さんふらわあ きりしま」の就航に伴い、本船は「さんふらわあ きりしま1」と改名され、一旦は運航を休止しました。しかし、2018年には、他の船舶の機関トラブルによる代船として、10月と11月にそれぞれ期間限定で臨時運航を行いました。この臨時運航が、初代「さんふらわあ きりしま」の最後の航海となりました。

充実した船内設備

「さんふらわあ きりしま」の船内は、南フランスの明るい雰囲気を再現した内装が施されていました。全個室が海側に窓を備え、トイレは温水洗浄便座付きと、快適さを追求した設計です。レストラン「コートダジュール」、展望サロン「カンヌ」といった、地中海を彷彿とさせる名称の設備も船内の魅力の一つでした。

その他にも、売店、自動販売機、展望風呂、コインロッカー、喫煙コーナー、授乳コーナー、ゲームコーナー、ペットルーム、ドライバー娯楽室など、様々な設備が用意されていました。現在では撤去されてしまったものもありますが、カードルームやカラオケルーム、和室「霧島」、ラウンジ「ソレイユ」、グリル「ル・ブルー」、スナック「ミモザ」なども、かつては利用できた設備です。和室「霧島」とラウンジ「ソレイユ」は後にツーリストルームへと変更され、グリル「ル・ブルー」はフリースペース、スナック「ミモザ」は自動販売機コーナーへと用途が変更されました。

地中海の風を感じさせる、思い出深い航海

「さんふらわあ きりしま」は、長年に渡り多くの乗客を乗せ、大阪と志布志、そして東京と苫小牧を繋ぐ重要な役割を担いました。南フランスをイメージした明るい船内と、充実した設備は、乗客にとって忘れ難い航海の思い出を刻む舞台となったことでしょう。現在では引退しましたが、その活躍は、フェリーの歴史に刻まれた重要な一ページとなっています。

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