しんがり 山一證券 最後の12人

しんがり 山一證券 最後の12人

『しんがり 山一證券 最後の12人』は、清武英利による実話をもとにしたノンフィクション小説です。本書は、1997年11月に自主廃業を選択した山一證券の内部で繰り広げられた社員たちの奮闘を中心に描いています。物語の背景には、当時の日本の金融業界における不正行為が浮かび上がり、その象徴として山一證券の崩壊が存在していました。

1997年の春、山一證券は設立100周年を迎えた矢先、突如として大蔵省の証券取引等監視委員会（SESC）の立入検査を受けました。内部告発により、証券会社の間で横行していた総会屋への利益供与の実態が明るみに出てきたのです。この調査は、単なる監査に留まらず、金融業界全体に衝撃を与えるものでした。特に山一證券では、経営陣による隠蔽工作や、不正会計処理が行われていたことが後に分かりました。

この事態に直面したのが、常務取締役の嘉本隆正を含む12人の社員たちでした。彼らは、他の社員が再就職先を探す中、会社に残り清算業務に従事し、破綻の真相を追及することを決意しました。彼らは、無給で社内調査委員会を立ち上げ、数千億円にも及ぶ簿外債務の調査を行いました。

破綻の原因は、1989年に遡り、小池隆一による事件が起点となっていました。彼の不正な融資活動によって、山一證券は不正な利益供与に関与し、やがては2600億円もの簿外債務を抱えることになりました。大蔵省や銀行からの救済が拒否される中、社員たちは真実を明らかにするため奮闘します。

物語は、さまざまな社員たちの強い意志と責任感を持った行動を描写しています。嘉本は、「組長」と呼ばれ、破綻の真実を解明するためのリーダーシップを発揮。彼に密着し、共に奮闘する菊野晋次、長澤正夫、竹内透など、多くの社員たちの個性的な背景と内面が描かれています。

また、本書は社会派小説としても評価され、2014年度の第36回講談社ノンフィクション賞を受賞。テレビドラマ『しんがり 山一證券 最後の聖戦』としても制作され、実際の社員に取材を行った結果、より深くリアルに描写されたストーリーが放送されました。

総じて、『しんがり 山一證券 最後の12人』は、一つの会社の崩壊を通じて、人間の尊厳や誠実さ、そして真実を追求する姿勢の大切さを訴えかけてくる作品です。読者に強いメッセージを送りつつ、実際に起こった出来事を興味深い形で提供してくれる良書と言えるでしょう。

もう一度検索