じぶ煮

じぶ煮（治部煮）とは

じぶ煮は、石川県金沢市の代表的な郷土料理で、加賀料理の一つです。主な材料は鴨肉または鶏肉で、その他に生麩、しいたけ、青菜などを使い、醤油ベースの出汁で煮込んで作られます。

特徴

じぶ煮の特徴は、そぎ切りにした肉に小麦粉をまぶしてから煮込む点です。この小麦粉が、肉の旨味を閉じ込めると同時に、煮汁にとろみをつける役割を果たします。薬味にはワサビが用いられ、味が引き締まります。

材料

本来はツグミなどの野鳥が使われていましたが、現在では鴨肉や鶏肉が一般的です。金沢特産のすだれ麩や、しいたけ、せりやほうれん草などの青菜が具材として使われます。

名前と起源

「じぶ」という名前の由来には、いくつかの説があります。

材料を「じぶじぶ」と煎りつけるようにして作るという説がありますが、古い料理本には「しふしふ」と記載されています。
「じゅぶ」という言葉が変化したという説があり、「じゅぶ」は「熟鳧（じゅくぶ）」の略で、中国語で「鴨の煮込み」を意味するという説もあります。
豊臣秀吉の兵糧奉行であった岡部治部右衛門が朝鮮から持ち込んだという説もあります。

料理の起源についても諸説あり、キリシタン大名であった高山右近が加賀にいた頃に伝えた欧風料理が変化したという説や、18世紀に書かれた料理書に記載された「麦鳥」という料理が変化したという説があります。この「麦鳥」は、雁や鴨の肉をそぎ切りにし、麦の粉をまぶして濃い醤油味で煮るというもので、現在のじぶ煮に近いとされています。

歴史

じぶ煮の歴史を辿ると、18世紀前期には「麦鳥」という料理が、19世紀前期には「じゅぶ」と呼ばれる鴨料理が混同され、現在のじぶ煮に繋がったと考えられています。また、昭和天皇が第二次世界大戦後に各地を巡幸した際、福井県では「雛鳥の治部煮仕立」が夕食に供されたという記録も残っています。

現在のじぶ煮

現在では、家庭料理としても親しまれており、料亭や飲食店でも提供されています。その歴史と独特の製法は、金沢の食文化を語る上で欠かせない存在です。

関連項目

日本の獣肉食の歴史
煮物
鴨鍋

外部リンク

* じぶ煮 石川県 | うちの郷土料理 - 農林水産省

じぶ煮は、その独特の風味と歴史から、金沢を訪れた際にはぜひ味わっていただきたい一品です。それぞれの家庭や店によって味が異なるのも、じぶ煮の魅力の一つと言えるでしょう。

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