そうかもしれない

そうかもしれない

『そうかもしれない』は、日本の作家、耕治人（こうじじん）によって書かれた小説作品、およびそれを基に2005年に製作・公開された日本の映画である。主に人生の晩年に差し掛かった夫婦の間に訪れる、老いや病といった避けがたい現実と、それを通じて深まる、あるいは問い直される絆と愛の形を静かに見つめる物語として知られる。

小説について

原作となったのは、耕治人が手掛けた複数の作品である。映画の直接的なタイトルにもなっている小説『そうかもしれない』は、1988年に講談社から単行本として刊行された。また、映画は『そうかもしれない』に加えて、『一条の光』、『天井から降る哀しい音』、『どんなご縁で』といった耕治人の他の作品群からも影響を受けているとされる。これらの原作小説の一部は、後の文庫本や全集に収録されている。例えば、『一条の光』は1989年刊行の『耕治人全集』第3巻（晶文社）に収められており、映画の主要な原作四点をまとめたものとしては、1991年刊行の講談社文芸文庫版『一条の光・天井から降る哀しい音』や、2006年に武蔵野書房から刊行された『そうかもしれない 耕治人命終三部作その他』などがある。

映画について

小説『そうかもしれない』などを原作とする同名の映画は、2005年に日本で製作された。監督と脚本は保坂延彦が務めている。この映画は、同年開催された第18回東京国際映画祭の日本映画・ある視点部門にて初めて観客に披露された。その後、2006年9月30日より、東京のシネスイッチ銀座をはじめとする全国の劇場で一般公開された。上映時間は106分である。

あらすじ

長年連れ添い、これから穏やかな晩年を二人で過ごしていくはずだった夫婦の日常に、ある変化が訪れる。妻は物忘れが激しくなるなど、次第に認知症の兆候を見せ始める。夫は妻の異変に気づき、その病と懸命に向き合おうと努める。しかし、老いらくの夫婦に更なる試練が降りかかる。妻の介護と向き合う夫自身もまた、癌を宣告され、入院を余儀なくされてしまうのだ。予期せぬ病という厳しい現実を前に、夫婦は互いの存在と、これまでの人生、そして愛の形を深く見つめ直していく。

キャスト

物語の中心となる夫婦をはじめ、作品を彩る個性豊かな俳優陣が出演している。

高山ヨシ子：雪村いづみ
森田武：阿藤快
時岡定夫：下條アトム
水野医師：夏木陽介
志田文枝：烏丸せつこ
高山治：桂春團治
その他：真実一路、柳家小三治、村井美樹、東千晃 ほか

スタッフ

映画製作には以下のスタッフが携わっている。

原作：耕治人
監督・脚本：保坂延彦
製作総指揮：大平義之
音楽：みつとみ俊郎
エンディングテーマ：ジャッキー・ウー「架け橋」
撮影：倉本和人
照明：淡路俊之
美術：黒須康雄
録音・整音：星一郎（アオイスタジオ）
編集：金子尚樹
音響効果：伊藤克己（スワラ・プロ）
助監督：李潤午
メイク監修：カオリ・ナラ・ターナー
現像：東映ラボ・テック
製作者：新田博邦
プロデューサー：赤坂幸隆
企画：株式会社ふたり
制作協力：ミューズ・プランニング
製作：「そうかもしれない」製作委員会（代表：フォワード・グループ）

この映画は、老いや病というテーマを通して、普遍的な夫婦の愛と人生の黄昏を静かに、そして深く描き出した作品として評価されている。

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