そして - 子連れ狼 刺客の子

『そしてー子連れ狼 刺客の子』：5歳の大五郎、江戸城地下迷宮の試練

『そしてー子連れ狼 刺客の子』は、人気シリーズ『子連れ狼』の新たな物語です。小池一夫の原作、森秀樹の力強い作画によって描かれる本作は、『新・子連れ狼』の直接的な続編として、主人公拝大五郎の幼少期に焦点を当てています。 シリーズ初期の作画を担当した小島剛夕氏への敬意も込められ、作画原案者としてクレジットされている点も特筆すべきでしょう。

本作は、2007年3月から2008年7月にかけて『時代劇漫画 刃-JIN-』で連載されましたが、雑誌休刊により中断。その後、2009年4月よりeBookJapanのウェブマガジン「KATANA」で連載が再開され、単行本は小池書院から全5巻が刊行されています。

物語は、大五郎が東郷重位と共に江戸城に討ち入り、将軍の座を偽る公儀隠密・間宮林蔵を倒した直後から始まります。幕府の危機を救った大五郎でしたが、重位を失い、自身も刃傷沙汰に関わった罪で捕縛されてしまいます。

5歳にして将軍暗殺未遂に関与した大五郎の処遇は、幕閣内で激しく対立。助命論と死罪論が真っ向から衝突する中、将軍家剣術指南役の小野忠常は、大五郎に武士としての「最期」を迎えさせたいと願います。 忠常は将軍の許可を得て大五郎と真剣勝負を挑みますが、驚くべきことに大五郎はこれを制してしまいます。

5歳児が将軍家剣術指南役を打ち破ったという事実は、幕府に衝撃を与えました。大五郎への畏怖と、その危険性を考慮した将軍は、究極の選択として、大五郎を江戸城地下深くにある迷宮「弾掌（だんじょう）」へと追放するのです。

弾掌は、広大な地下空間であり、暗闇の中で様々な異形の者たちが待ち構えています。大五郎は、この絶望的な状況の中で、生き延びるため、そして、己の運命を切り開くため、問答と戦闘を繰り返しながら、出口のない迷宮をさまよいます。 左手を壁につけ、ひたすらに進む大五郎の姿は、幼いながらも揺るぎない意志と、過酷な運命に抗う強い生命力を感じさせます。

『そしてー子連れ狼 刺客の子』は、単なる時代劇アクション漫画ではありません。5歳という幼少期の大五郎が、過酷な試練を乗り越え、成長していく姿は、読者に深い感動と、様々な感情を呼び起こします。 大五郎の運命、そして、彼が弾掌の暗闇の中で出会う者たち、彼らの物語が、読者の想像力を掻き立て、忘れられない体験を与えてくれるでしょう。 この作品は、まさに、子連れ狼シリーズの新たな金字塔と言えるのではないでしょうか。

この物語は、大五郎という少年の成長物語であると同時に、時代劇における権力闘争、人間の業、そして、生きることの尊さを問いかける、重厚なテーマも内包しています。 森秀樹の力強い作画は、大五郎の孤独と、彼の内なる強さを際立たせ、読者を物語の世界へと引き込みます。

シリーズ全体を通して、大五郎の成長と共に、読者もまた、彼と共にあるかのように、物語に深く関わっていくことができるでしょう。これは、単なる漫画を超えた、忘れられない体験となるはずです。

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