東郷重位

東郷重位

東郷重位（とうごう ちゅうい / しげかた）は、戦国時代から江戸時代初期にかけての武将であり、剣豪です。島津氏（薩摩藩）の家臣として仕え、示現流剣術の流祖としてその名を歴史に刻んでいます。通称は藤兵衛、後に長門守、和泉守、越前守、肥前守と名を変えました。示現流では、諱の「重位」は口伝で「ちゅうい」と読みます。

生い立ちと東郷氏への復帰

永禄4年（1561年）、瀬戸口重為の三男として誕生しました。瀬戸口氏は、北薩の土豪である東郷氏の遠縁にあたります。同時代の史料には、瀬戸口藤兵衛や瀬戸口肥前守として記されることもあります。天正年間に、兄の重治とともに東郷氏嫡家17代目である東郷重虎の許可を得て、東郷氏に復しました。また、外孫で古[[示現流]]開祖である種子島時貞の系図には、「東郷肥前重信」と表記されています。

剣術修行と示現流の創始

若い頃はタイ捨流を学んでいました。島津氏に仕官し、天正6年（1578年）の高城合戦で初陣を飾り、薬丸兼成を親分として首級を挙げました。天正15年（1587年）、島津氏が豊臣秀吉に敗北した後、重位は島津義久に従って上洛します。当初は金細工の修行が目的でしたが、天寧寺の僧・善吉との出会いをきっかけに、彼の剣術（天真正自顕流）に開眼。修行後、薩摩に帰国し、天正17年（1589年）に国分郷鳥越に戻り、天真正自顕流にタイ捨流の技術を取り入れ、独自の工夫を重ねていきました。この独自の剣術が後の示現流の基礎となります。

島津家での活躍と示現流の確立

慶長4年（1599年）頃には、島津家中に多くの門人を抱えていました。その名声は島津忠恒の耳にも届き、慶長9年（1604年）、忠恒の御前試合でタイ捨流の剣術師範を破り、島津家兵法師範となりました。この時、逆上した忠恒に斬りかかられるというアクシデントがありましたが、丸腰の重位はとっさに扇子で忠恒の手を打ち据え、刀をかわしたという逸話が残っています。その後、南浦文之によって「示現流」という流派名が命名されました。

人となりと晩年

重位は、非常に礼儀正しく、物事を荒立てない人格者であったと伝えられています。薩摩藩の家老からも、島津家内部の密事に関する相談を受けることが多かったといわれています。後に薩摩藩の密貿易拠点であった坊泊郷（現在の南さつま市坊津町）の地頭となったことからも、単なる剣術の達人ではなく、政治的な手腕も持ち合わせていたことが窺えます。坊郷地頭職就任時には、鹿児島城下に宅地を賜り、国分を離れたと推測されています。重位の石高は400石でしたが、島津忠恒から1000石を授けられそうになった際、思うところあって600石を返還したという逸話も残っています。隠居後は100石を与えられました。寛永20年（1643年）に83歳で亡くなり、現在の鹿児島市草牟田墓地に埋葬されました。

東郷重位が登場する作品

小説
「薩南示現流」（津本陽）
漫画
「薩南示現流」（とみ新蔵）
「修羅の刻」（川原正敏）
「新・子連れ狼」（小池一夫・森秀樹）
「テンカイチ 日本最強武芸者決定戦」（中丸洋介・あずま京太郎）
テレビドラマ
「柳生新陰流」（演：伊達正三郎）
ゲーム
「剣豪3」
「戦国大戦」（声：弦徳）
「太閤立志伝IV」

参考文献

鹿児島県史料集（34） 示現流関係資料、鹿児島県史料刊行会、平成6年
坊津町郷土史（鹿児島県立図書館蔵）
平姓東郷氏支族系図（鹿児島県立図書館蔵）【同書は「鹿児島市史III」の「東郷家文書」の東郷家系図の底本になった物】
宮下満郎「池上四郎伝補説」（「敬天愛人」第20号別刷）
「鹿児島士人名抄録」
* 「国分郷土誌資料編」

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