そして愛に至る

『そして愛に至る』：愛と葛藤、そして和解の物語

2000年、フランスとスイス合作で製作された映画『そして愛に至る』（原題：Après la réconciliation）は、アンヌ＝マリー・ミエヴィル監督による長編劇映画です。 ミエヴィル監督は、著名な映画作家ジャン＝リュック・ゴダール氏の長年のパートナーとして知られており、本作でもゴダール氏が主要キャストの一人として出演しています。これはミエヴィル監督にとって4作目の単独監督作品となります。

ミエヴィル監督とゴダール氏の出会いは1970年。当時、ゴダール氏はジガ・ヴェルトフ集団の中心人物であり、アンヌ・ヴィアゼムスキー氏を妻としていました。歌手から写真家へと転身したミエヴィル監督は、1975年にはゴダール氏と共同で映画『うまくいってる?』を制作し、主演も務めています。本作『そして愛に至る』では、100本近い作品に出演経験を持つゴダール氏と並ぶ形で、女優としての実力を見せつけています。

本作の物語は、パリに戻ってきた女性（ミエヴィル監督が演じる）を中心に展開します。彼女は友人カトス、そして夫であるロベール（ゴダール氏）と共に、人生における様々なテーマについて議論を交わします。女性の不在中に、カトスはロベールに誘惑を試みますが、ロベールはそれを拒絶します。女性がアルチュールという男性と共に帰宅すると、4人での会話は次第に口論へと発展し、アルチュールは去っていきます。2人きりになった夫婦は、女性がアルチュールとの恋を告白。ロベールは涙を流し、女性は彼を抱きしめます。

その後、劇場を訪れた夫婦は、偶然にもカトスとアルチュールと遭遇。再び4人での議論が始まるという構成になっています。

映画全体を通して、様々なテーマが複雑に絡み合っていますが、物語の中心は、パートナーの他者との恋愛問題、そしてその問題を通して描かれる登場人物たちの感情の揺れ動きです。特に、ゴダール氏の1996年の作品『フォーエヴァー・モーツアルト』に出演した女優、ベランジェール・アロー氏への恋愛的執着との関連性が示唆されています。

日本での公開は、ゴダール氏が発表した『愛の世紀』（1999年）の公開に続く形で、2002年に行われました。同年には『愛の世紀』との2枚組DVDも発売されましたが、現在は廃盤となっています。

スタッフ・キャスト陣も、映画界のベテランや実力者が名を連ねています。撮影はクリストフ・ボーカルヌ氏、録音はフランソワ・ミュジー氏、美術はドミニク・ルボー氏など、それぞれの分野で高い技術を持つスタッフが参加。音楽も、レスター・ボウイ、キース・ジャレット、アルヴォ・ペルトといった著名な作曲家たちの作品が使用され、映画の世界観をさらに豊かに彩っています。

『そして愛に至る』は、単なる恋愛映画にとどまらず、複雑な人間関係、愛と葛藤、そして最終的な和解といった普遍的なテーマを、繊細かつリアルに描いた作品と言えます。ゴダール氏とミエヴィル監督の、長年のパートナーシップの上に成り立った、そして、二人の人生経験が反映された、深く心に響く作品として、高く評価されています。

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