そりこ

そりこの概要

「そりこ」とは、島根県の中海で主に使用されていた刳舟の一種で、その特色ある形状から名付けられています。この舟は、かつて多様な用途で活躍していましたが、時が経つにつれて特にサルボウガイ漁に特化して使われるようになりました。現在では、美保神社に保存されている「そりこ」が重要有形民俗文化財に指定されています。

舟の構造

「そりこ」は、一般的には約6メートルの長さを持ち、その幅は広いところで約1メートル、高さは中央部で約56センチメートルです。最初はマツやモミの一木を使って作られていましたが、大木の供給が減少したため、2本や3本の木材を継ぎ合わせる方法に変わりました。この舟の特徴の一つは、両端が大きく反っている点で、この形状から「そりこ」と名付けられました。

過去の用途

「そりこ」は、もともと水上交通や漁り、運搬など幅広い用途に用いられていました。しかし、製作コストが高かったため、より安価に作れる矧舟が普及し、「そりこ」は次第にサルボウガイ漁専用に使われるようになりました。この漁法では、舟の後部に取り付けた漁具「桁」を使い、湖底の泥を掘り起こして貝を捕まえます。舟のローリングが求められるため、そりこの特異な構造が活かされたのです。

歴史の視点

「そりこ」の初見は、宝暦13年（1763年）に記された文献に見られます。そこには、当時大根島に21隻が存在したことが記録されています。時代が進むにつれ、1940年代にはその数は増加したものの、1960年代に入ると赤潮の影響で赤貝が減少したことが原因で、舟の数も急速に減少しました。2023年現在では、造船技術が途絶えてしまっており、あまり多くは残っていません。

舟の製作技術

そりこを作るための技術は、特定の船大工たちに受け継がれてきました。しかし、2023年現在ではその技術は途絶えてしまっています。製作方法は、基本的に「伐り出し」「荒削り」「仕上げ」の3つの工程から成り立っています。船大工にはそれぞれ異なる製作手法の系統があり、木の取り方や削り方、仕上げに至るまで、多様な技術が存在したのです。

文化財としての重要性

1963年に、美保神社に保存されている「そりこ」は重要有形民俗文化財として指定されました。この指定は、交通や生業に用いられるものとして評価された結果です。島根県内には「そりこ」以外にも重要な刳舟が存在しており、これらは地域の文化と歴史を語る重要な資料とされています。ただ、登録時点ではその数がかなり少なかったため、次第に「そりこ」に対する評価が高まっていったのです。

「そりこ」は、今やその生産が途絶えているため、過去の技術や文化の象徴として大切にされており、地域の歴史や伝統を今に伝える大切な存在です。

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