たぬきさん大当り

『たぬきさん大当り』

概要

『たぬきさん大当り』は1959年に公開された東映動画制作の短編アニメーションで、約15分の映像作品です。この作品は、日本のアニメーションを通して海外市場にアプローチしようとする試みの一環として制作されました。当時、アニメーションは言語や文化の壁を超える手段と考えられており、実写映画よりも国際的に受け入れられやすいとされていました。

製作にあたっては、アメリカの映画学生であるジョージ・M・リードが東映動画に参加し、ベテランアニメーターの熊川正雄と共に演出を担当しました。主演の主人公たぬきの動物が選ばれたのは、アメリカでは「ラクーン」と呼ばれるため、異文化でも親しみやすいと考えられたからです。

ストーリー

物語は、貧乏なたぬきさんが主人公です。彼は現在、失業中で家賃を滞納しており、大家から催促を受けていました。そんな彼は、一念発起して仕事を探すものの、気の弱い性格からなかなかうまくいきません。気落ちしたたぬきさんは、街を歩いていると公会堂でマンボコンテストが行われているのを見つけます。

気分転換がてら、彼は群衆に紛れて会場へ行くことにしました。しかし、席に置かれていた蟻のたかるチョコレートの上に気付かず座ってしまいます。その瞬間、お尻を蟻に噛まれてしまい、たぬきさんは思わず飛び上がり、舞台へと上がってしまいます。なんとその動きがマンボのリズムにぴったり合い、観客から拍手を浴び、結果としてコンテストで1等に選ばれました。

賞金を手にしたたぬきさんは、家賃を支払えることで大いに喜び、さらにはコンテストの司会者から今後もダンスパーティーに参加するように誘われます。こうしてたぬきさんは、ようやく職を得て、彼本来の明るさを取り戻すことができるのです。

キャスト

本作には、たぬきさんを演じる富士山竜をはじめ、大家役の沢彰謙、司会者の轟謙二、百姓や酒屋の役を演じた福知悟郎など、多くのキャストが参加しました。また、蟻のおばさん役の山本緑や蟻のおかあさん役の田中知子、委員役の三升家小勝など、様々なキャラクターが物語に彩りを添えています。

公開と評価

『たぬきさん大当り』は、1959年7月7日に一般公開され、同時上映には美空ひばり主演の作品や、他の短編も含まれていました。1967年には『東映こどもまつり』としてリバイバル上映され、新しい観客にもその魅力が伝わりました。短編アニメーションとしては、作画レベルが他の作品よりも劣っていたため、視覚的な魅力には限界があったものの、物語のユニークさは多くの人の心をつかみました。

総評

本作は、アメリカ人の視点から描かれた日本の文化や風習が反映されており、その珍妙さが評価の分かれる要因ともなりました。しかし、それが逆に新鮮さを生み出し、アニメーションの可能性を示した作品であったことは間違いありません。『たぬきさん大当り』は、アニメ史における重要な作品の一つとして位置付けられています。

もう一度検索