ちはや (潜水艦救難艦・2代)

潜水艦救難艦「ちはや」

「ちはや」（ローマ字：JS Chihaya, ASR-403）は海上自衛隊の潜水艦救難艦であり、計画番号はJ141です。この艦艇は千早城に由来する名前を持ち、日本においてその名を受け継いだ4代目の艦艇です。

設計・構造

「ちはや」は老朽化した潜水艦救難艦「ふしみ」（46ASR）の代替艦として建造されました。その設計は「ちよだ」（56AS）を基にした拡大改良型であり、潜水艦母艦の機能を撤廃し医療設備を強化しています。特に、DSRV（深海救難艇）を運用するために、船体の中央にムーンプールを備えるなどの設計が特徴的です。艦首楼は艦橋構造物まで延長され、基準排水量は1,800トンに大型化されました。これにより、従来装備されていた装備も艦内に収容できるようになり、迅速な遭難現場へのアクセスが可能となりました。

船体設計には造波抵抗の低減を考慮し、バルバス・バウが採用されている他、艦底には閉鎖装置が設けられています。この閉鎖装置は油圧で開閉する方式で、救難に求められる確実性を高めています。主機関には三井造船製の12V42M-Aディーゼルエンジンを2基搭載し、推進器には可変ピッチ・プロペラが2軸、サイドスラスターが艦首と艦尾に2基ずつ装備されています。これにより、艦位を保持しつつ、洋上での静止が可能となります。

能力

艦橋の後方には半甲板形で救難指揮所（RIC）が設けられています。深海救難艇（DSRV）は、本艦に搭載され、海面での救難活動を円滑に行うための運用機能が充実しています。

潜水艦救難において「ちはや」は「ちよだ」と同様の基本構成ですが、発進・収容方向の見直しが大きな特徴です。これにより、母艦のプロペラ雑音や気泡による影響を軽減させ、通信や位置把握の精度を向上させています。また、無人潜水装置（ROV）も搭載されており、これにより水中作業の多様な支援が可能です。さらに、深海潜水装置（DDS）が搭載されており、潜水士の進出や減圧治療、事故時の医療支援など多機能を兼ね備えています。

医療機能

「ちはや」の特筆すべき点は、医療機能の充実度です。手術室やX線室が新設され、救助された乗員のために80名分の居住スペースも確保されており、これは病室にも転用可能です。この医療区画は艦中央部に位置し、艦上減圧室（DDC）とのアクセスも良好です。

艦歴

「ちはや」は1997年に建造が始まり、2000年に就役しました。その後、さまざまな災害派遣の任務を遂行し、えひめ丸事故や東日本大震災に対応した実績があります。また、2018年の豪雨災害では入浴支援を行い、2022年には航空自衛隊の墜落事故現場で捜索活動を行うなど、常に国民の安全に寄与してきました。2023年4月にも墜落事故の捜索に従事し、艦の存在意義を示しています。

「ちはや」は単なる救難艦でなく、医療、救難、そして無人機運用への対応力を兼ね備えた多機能艦艇として、海上自衛隊の重要な一翼を担っています。

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