ちょっと長い関係のブルース

アルバム概要

『ちょっと長い関係のブルース』は、唯一無二の世界観を持つシンガー、浅川マキによって1985年7月1日に発表された通算18枚目のオリジナル・アルバムです。浅川自身の言葉によれば、この作品は、発表までの約5年間にわたる様々な音楽家たちとの交流に一つの区切りをつけるものとして位置づけられています。

作品の特徴

浅川マキはキャリアを通じて多様な音楽的実験を重ねてきましたが、本作ではそれまでの試みとは異なるアプローチが採られました。共演者は渋谷毅ただ一人。彼の奏でるピアノのみをバックに歌うという極めてシンプルな編成が選ばれています。この構成により、浅川マキが根底に持つジャズシンガーとしての力量や表現力が、剥き出しのかたちで聴き手に届けられます。その歌声とピアノだけが織りなす親密な空間は、ジャズというジャンルを超え、歌そのものの持つ力を改めて感じさせるものとなっています。

アルバム収録曲の多くは、過去のアルバムで発表された楽曲の再演（リメイク）で構成されています。これは単なる既曲の焼き直しではなく、渋谷毅のピアノのみという新たな環境で歌い直すことで、原曲とはまた異なるニュアンスや深みが引き出されている点が特徴です。このリメイク群と書き下ろし曲が組み合わさることで、浅川マキの音楽世界における過去と現在が交錯し、作品に独特の奥行きを与えています。

収録曲

本アルバムは全10曲で構成され、LP時代のA面とB面にあたる構成となっています。以下に収録曲リストと、それぞれの作詩・作曲者、そしてリメイク元アルバムの情報を示します。

Side A

1. また聞こえて来るワルツ
作詩：浅川マキ／作曲：本多俊之
アルバム『幻の男たち』からのリメイク。
2. Dark Change（暗転）
作曲：渋谷毅
3. ちょっと長い関係のブルース
作詩・作曲：浅川マキ
アルバム『マイ・マン』からのリメイク。
4. 秋意
作詩：浅川マキ／作曲：渋谷毅
5. 夜
作詩・作曲：浅川マキ
アルバム『灯ともし頃 MAKI VII』からのリメイク。

Side B

1. マイ・マン
作詩：C.Pollack／日本語詩：浅川マキ／作曲：Maurice Yvain
アルバム『マイ・マン』からのリメイク。
著作権情報では作詞者がCharles Jacques Mardochee-Willemetz Albert Lucienと表記される場合もあります。
2. セント・ジェームス病院
日本語詩：浅川マキ／作曲：Joe Primrose
アルバム『裏窓』からのリメイク。
3. このごろ
作詩・作曲：浅川マキ
4. 炎の向こうに
作詩：浅川マキ／作曲：本多俊之
アルバム『幻の男たち』からのリメイク。
5. さかみち
作詩・作曲：浅川マキ
アルバム『MAKI LIVE』からのリメイク。

収録曲10曲のうち、6曲が過去のアルバムからのリメイク楽曲です。

参加ミュージシャン

このアルバムの演奏者は、作品のコンセプトを体現するように、浅川マキと渋谷毅の二名のみです。

浅川マキ - VOCAL
渋谷毅 - PIANO

レコーディング・スタッフ

本作の制作には以下のスタッフが携わっています。

吉野金次 - RECORDING AND REMIX ENGINEER
柳沢一彦 - ASSISTANT ENGINEER
田村仁 - PHOTOGRAPHY
板垣驥 - DESIGN
せなまる舎 - MUSIC PRODUCTION
柴田徹 - MUSIC PRODUCTION
* 石坂敬一 - EXECUTIVE PRODUCER

再発売

オリジナル発表から時を経て、2011年6月15日には、本アルバムが紙ジャケット仕様でリマスタリングされ、再発売されました（規格品番：TOCT-27079）。この再発売CDには、オリジナルレコード盤に付属していた歌詩カードが復刻されて収められています。

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