つかまるのはごめん (1957年の映画)

『つかまるのはごめん』（原題: Give And Tyke、1957年公開）は、名作アニメ『トムとジェリー』でおなじみのウィリアム・ハンナとジョセフ・バーベラ監督によるスピンオフ作品です。メトロ・ゴールドウィン・メイヤー（MGM）制作で、当時最新の技術であったシネマスコープを採用し、迫力のある映像で描かれています。

物語の中心となるのは、一匹の野良犬です。彼はゴミ捨て場で骨や新聞紙を探しながら、陽気に鼻歌を歌っています。しかし、その新聞記事に「首輪をしていない犬は拘束される」という恐ろしい記事を発見。慌てて逃げ惑う彼が目にしたのは、飼い犬のスパイクとその息子タイクでした。生き延びるため、野良犬はスパイクの首輪を奪おうとしますが失敗。すると、そこにタイクがいたので、その首輪を盗んでしまいます。

スパイクは野良犬に詰め寄り、記事を見せられた彼は、愛する息子のタイクが保健所に連れていかれる危機を悟ります。そして、逃げ出した野良犬を追いかけるのでした。こうして、野良犬、スパイク、保健所の職員、そしてタイクによる、予測不能なドタバタ劇が始まります。

保健所の職員はタイクを捕まえ、車に閉じ込めようとします。その時、スパイクはタイクを守るため、自分の身代わりとして保健所へ行くことを申し出ます。愛犬の勇敢な行動を見た野良犬は、初めて自分の行動を後悔し、涙を流します。そして、改心した野良犬は保健所の職員に「代わりに俺を連れて行け」と自首し、タイクに首輪を返し、スパイクを解放します。

その隙を突いて、野良犬は保健所の職員の車を奪い、怒って追いかけてくる職員をよそに走り去って行きます。スパイク親子は無事に救われ、物語はスパイクのトレードマークともいえる「HAHAHAHAHA, That's my boy!」というセリフと共に幕を閉じます。

本作は、コミカルな展開の中に、家族愛や責任感といった普遍的なテーマが織り込まれています。野良犬の軽率な行動から始まる騒動は、スパイクの自己犠牲的な行動、そして野良犬の改心によって、感動的な結末を迎えます。

登場キャラクターは、まず主人公的な野良犬。彼は、状況を打破するため、やや身勝手な行動をとってしまいますが、最後は反省し、責任を取ろうとします。スパイクは、愛する息子を危険から守ろうとする、勇敢で献身的な父親像を体現しています。そして、その息子タイクは、騒動に巻き込まれる無邪気な子供として描かれています。保健所の職員は、職務に忠実ながらも、スパイクの行動に心を動かされる、人間味あふれる人物として描かれています。

日本では、TBS系列で放送された『トムとジェリー』の短編プログラム内で放送されました。当初は『トムとジェリー』の短編作品に挟まれる形で放送されていましたが、再放送時には、テックス・アヴェリー監督作品と差し替えられるケースもあったようです。音楽はスコット・ブラッドリーが担当しており、アニメーション制作にはビル・シーペック、ルイス・マーシャル、ハーマン・コーエン、ケネス・ミューズ、カール・ヴィンチといった、当時一流のアニメーターたちが参加していました。脚本はホーマー・ブライトマン、背景はドン・ドリスコール、レイアウトはディック・ビッケンバッハが担当しています。これらのスタッフの卓越した技術によって、本作は完成度の高い作品となっています。

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