つわり

つわり（悪阻）について

妊娠に伴う体の変化の一つとして知られるつわりは、主に妊娠初期に見られる吐き気や嘔吐の状態を指します。この症状は個人差が大きく、妊婦によって異なります。一般的には妊娠3ヶ月から5ヶ月の間に改善傾向を見せることが多いですが、一部の妊婦では出産直前まで続くこともあります。

つわりの概要

つわりは、以前は妊娠高血圧症候群に分類されることもありましたが、現在では直接的に生命に関わる症状とは考えられなくなっています。しかし、極度に症状が重くなると、飲食ができなくなることもあり、これは母体にとって非常に危険な状態です。特に脱水症状が進行し、尿中にケトン体が出現する重症化した場合には、入院による治療が必要となります。この過程で「妊娠悪阻」と呼ばれる状態に進展することもあります。医師によっては、状態があまりにも深刻な場合には中絶を提案することもあります。

つわりの原因

つわりの原因は未だにいくつかの仮説が存在するものの、確実なものは確立されていません。妊娠初期に分泌されるヒト絨毛性ゴナドトロピン（hCG）や、生理的な変化として体質がアルカリ性から酸性に変わることが関与しているという説があります。最近の研究では、2023年に国際的な研究チームが、胎盤で生成されるGDF15というホルモンがつわりの原因に関わっていることを示しました。具体的には、妊娠前のGDF15値が低い女性はつわりが重症化しやすく、逆にGDF15値が高い人はつわりをほとんど経験しないことが明らかとなりました。

つわりの症状

つわりの症状は多様で、個人により異なりますが、一部の一般的な症状には以下が含まれます。

• - 吐き気や嘔吐
• - 唾液の増加
• - 全身の倦怠感
• - 頭痛や眠気

特に、早朝の空腹時にこれらの症状が強く出る傾向があり、このため英語では「Morning sickness」と称されています。場合によっては、食べ物の嗜好が変わることもあり、特に米飯やタバコの匂いに敏感になることが多いです。液体さえも受け付けない状況になると、脱水症状を引き起こし、場合によっては腎不全や静脈血栓症を引き起こす恐れがあるため、医療機関での診察が必要です。重度の嘔吐が続くと、マロリー・ワイス症候群や栄養失調によるウェルニッケ脳症を発症する可能性もあります。

つわりへの対策

つわりを軽減するためには、まず無理をせず体を休めることが大切です。また、空腹が長く続かないよう、適宜水分と食事の摂取を心掛けると良いでしょう。自分が嫌なものの匂いを避け、ストレスの少ない生活を心がけることも有効です。生姜がつわりによる嘔気を改善する助けになるとの報告もありますが、酸素吸入が効果があるかどうかはまだ不明とされます。

医療上の介入

通常、つわりは妊娠5週目から始まり、16週頃には軽快しますが、妊娠後期や出産直前にまで症状が続くこともあります。この期間は胎児の器官形成期にあたるため、安易な薬物投与は避けるべきです。日本では1960年代のサリドマイド事件があり、その教訓からも吐き気止めの使用には慎重を要します。消化管機能改善薬であるメトクロプラミドは、催奇形性は確認されていませんが、妊娠初期の短期間に留めるべきと考えられています。漢方薬は比較的安全に投与することができると言われ、一部の妊婦さんには利用されています。また、点滴治療においてビタミン剤を追加することがあります。

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