てしお型巡視船

てしお型巡視船：日本の沿岸警備を担った500トン型巡視船

はじめに

1970年代、国際情勢の変化に伴い日本の排他的経済水域（EEZ）が拡大し、海上保安庁の警備任務は大幅に増加しました。この状況に対応するため、従来の350トン型巡視船を凌駕する、より大型で航行性能に優れた巡視船の必要性が生じました。その結果として建造されたのが、てしお型巡視船です。本稿では、てしお型巡視船の設計、運用、歴史、そして老朽化問題にまで言及し、その全貌に迫ります。

設計と建造

てしお型巡視船は、350トン型巡視船の設計思想を受け継ぎつつ、一回り大型化された500トン型巡視船です。その設計は、350トン型巡視船の最終発展型であるびほろ型をベースに、航行性能と居住性の向上を図っています。

主機関には、1500馬力の4サイクルディーゼルエンジンを2基搭載。排水量の増加にも関わらず、船体設計の工夫により18ノットの速力を維持しました。また、耐氷構造を採用した船体には、操舵室への機関監視室設置、甲板機械の操作性向上、居住区の拡大と冷暖房完備など、運用面での改善も数多く盛り込まれています。兵装面では、JM61-M 20mm多銃身機銃とJMA-159Bレーダーを装備しました。北方配備を予定された10番船「そらち」は、耐氷構造をさらに強化しています。7番船「いさづ」は、海上保安学校の練習船も兼ねていたため、後部上構が大型化されている点が特徴です。

運用と歴史

てしお型巡視船は、日本各地の海上保安部に配属され、領海警備や漁業取締りといった重要な任務に就きました。特に、1番船「てしお」から10番船「そらち」まで建造された本型は、その長きにわたる運用期間の中で、数々の事件や事故に対応してきました。

運用期間中には、いくつかの船が海上保安学校の練習船として活用されました。「いさづ」や「そらち」は、練習船として活躍した後、他の船舶の配備等に伴い、解役されました。

2022年の知床遊覧船沈没事故では、「ゆうばり」が事故当日に網走港に接岸していましたが、荒天のため出港を見合わせました。この出来事を通して、老朽化による船舶の運用上の制約や、バウスラスタ未装備による出港困難といった問題点が改めて認識されました。

まとめ

てしお型巡視船は、日本のEEZ拡大という歴史的転換期に建造され、日本の沿岸警備の近代化に大きく貢献した巡視船です。その設計思想や運用実績は、後続の巡視船の開発にも大きな影響を与えました。しかし、長年の運用により老朽化が進み、運用上の課題も浮き彫りになりました。てしお型巡視船の歴史は、日本の海洋安全保障の歩みと、それに伴う技術革新を物語っています。将来、海洋環境の変化や新たな脅威への対応において、てしお型巡視船の経験がいかされる機会があるかもしれません。

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