てんびん座アルファ星

てんびん座α星について

てんびん座α星は、地球から約78光年の距離に位置する多重連星系です。この星系は、少なくとも4つの恒星で構成されており、複雑な構造を持つと考えられています。

構成要素

この星系は、主に以下の恒星で構成されています。

α星A (α2星): この星系で最も明るく見える恒星で、2.75等の明るさを持ちます。α星Aは、さらにAa星とAb星という2つの恒星からなる分光連星です。Aa星とAb星は非常に近接しており、太陽と水星間の距離（約0.4天文単位）と同程度の距離で互いを周回していると推定されています。このうち、明るい方の恒星であるAa星が、国際天文学連合によって「ズベンエルゲヌビ」という固有名で正式に承認されました。
α星B (α1星): α星Aから231秒角（約3分51秒）離れて見える恒星で、F型主系列星です。α星Bもまた、分光連星であることが確認されています。α星Aのペアからは約5,500天文単位離れた位置にあります。
* てんびん座KU星: α星Aから約2.6度離れた位置にある7等星で、G型主系列星です。この星も、てんびん座α星系に属する可能性が指摘されています。

特徴

これらの恒星は、約2億年前に同じ場所で誕生し、天球上で同じような固有運動を示す「カストル運動星団」の一員と考えられています。

また、てんびん座α星は黄道に非常に近い位置にあるため、月や惑星による掩蔽（星食）が起こることがあります。2052年11月10日には、水星による掩蔽が予測されています。

名称の由来

固有名の「ズベンエルゲヌビ (Zubenelgenubi)」は、アラビア語で「南の爪」を意味する الزبن الجنوبي (az-zuban al-janūbiyy) に由来します。これは、かつててんびん座の領域がさそり座の爪の一部と考えられていたことに起因します。また、「ズバーナー・ジャヌービー (az-zubānā al-ğanūbī)」という別の表記も存在します。

さらに、「キファ・アウストラリス (Kiffa Australis)」または「エルキファ・アウストラリス (Elkhiffa Australis)」という名称でも呼ばれることがありました。これは、アラビア語で「皿」を意味する「キファ」と、ラテン語で「南」を意味する「アウストラリス」を組み合わせたもので、「南の（天秤の）皿」を意味します。

国際天文学連合 (IAU) は、2016年8月21日に、ワーキンググループ (WGSN) によって、ズベンエルゲヌビをてんびん座α2星A（α星Aa）の固有名として正式に承認しました。

まとめ

てんびん座α星は、複数の恒星が複雑に絡み合った多重連星系であり、その構成要素や運動は、天文学的に興味深い研究対象となっています。また、黄道に近い位置にあるため、掩蔽という現象を通して、より詳細な観測も可能となります。

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