てんりゅう (訓練支援艦)

てんりゅう（JS Tenryu, ATS-4203）

てんりゅうは、海上自衛隊に所属する訓練支援艦であり、艦名は天竜峡に由来します。これは日本の艦艇としては三代目の「天龍」にあたります。

来歴

この艦は、老朽化が進んでいた訓練支援艦「あづま」（42ATS）の後継艦として計画され、当初は2,200トン型の「くろべ」（61ATS）よりも大きく、高速の4,700トン型として設計されていました。しかし、最終的には61ATSの性能向上型として、ほぼ同型の2,400トン型として建造されることとなりました。

設計

てんりゅうの全体艦内配置は前作である61ATSを踏襲しているため、船体は上甲板が全通する長船首楼型が採用されています。居住性の向上に配慮され、主機関には防振対策や遮音材が導入されています。艦尾甲板は標的機を発射するための甲板であり、ヘリコプター甲板としても機能します。居住区は前作よりも一つ増え、4部屋の科員室が設けられており、女性自衛官の乗艦にも対応しています。

動力源にはディーゼルエンジン4基が搭載されており、主に低速航行時の安定性を重視した設計です。この艦では、自衛艦として初めてスリッピング・クラッチが採用され、安定した航行が実現されています。

装備

主な装備については、対空射撃訓練支援装置を含め、基本的には61ATSの設計を継承しています。標的機の発射・管理には、大型のBQM-34J改「ファイアビー」と小型のBQM-74E「チャカIII」が使用されます。これらは上甲板に設けられた標的機格納庫に収納され、運用時には自走式ランチャーに搭載されることで発射準備が行われます。

標的機の管理は戦闘指揮所（CIC）内の標的機管制卓が行い、これにより飛行ルートや実際の軌跡が表示されます。発射された標的機は、CICのミサイル評価装置により訓練分析が行われ、効率的な訓練がサポートされます。

揚収

訓練を終えた標的機はパラシュートで海上に着水し、艦のデッキクレーンを用いて揚収されます。この際、ダイバーがフックをかける方法と作業艇を利用する方法があり、作業効率が考慮された設計となっています。揚収された後は、標的機は洗浄され、その際に海洋汚染防止対策も施されています。

兵装

てんりゅうは訓練支援艦特有の装備を持ち、万が一標的機が操縦不能となり自艦に衝突の危険が生じた場合、最低限の火力をもってこれを撃墜できるよう設計されています。具体的には、81式射撃指揮装置と76ミリ単装速射砲が搭載されています。

艦歴

「てんりゅう」は、平成9年度計画の訓練支援艦としてマリンユナイテッドで受注後、住友重機械工業浦賀造船所で1998年に起工され、1999年に進水、2000年に就役しました。その後、護衛艦隊に編入され、現在は呉を母港としながら護衛艦隊第1海上訓練支援隊に所属しています。

2011年、東日本大震災発生時には災害派遣を行い、2020年には初の女性自衛官が艦艇先任伍長として就任しました。

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