でんきくらげ (映画)

電氣くらげ：たくましい女性の生き様を描いたエロティック・ドラマ

1970年、増村保造監督によって世に放たれた映画『電氣くらげ』。渥美マリ主演による「軟体動物シリーズ」の第3作として知られる本作は、自身の肉体を武器に、過酷な運命に立ち向かう女性の生き様を、鮮烈なエロティシズムと共に描き出しています。

物語の中心人物は、19歳の美しい女性・由美（渥美マリ）。彼女は貧しいながらも洋裁学校に通い、明るい未来を夢見ていました。しかし、母親・トミ（根岸明美）が場末のバーで働く生活の中で、由美は思わぬ出来事に巻き込まれていきます。トミの情夫である吉村（玉川良一）による性的暴行です。この事件をきっかけに、トミは吉村を殺害し、刑務所へと送られてしまいます。

母親を失った由美は、生活のためにトミが働いていたバーで働くことを決意します。そこで彼女は客からのプロポーズを受けますが、母親の犯罪を知った相手は去っていきます。その後、由美は地回りのヤクザ・風間（木村元）に目をつけられ、脅迫を受けます。しかし、由美は風間の隙を突いて警察に通報し、逮捕に追い込みます。

しかし、風間の報復はすぐに始まりました。釈放された風間と舎弟の石川（平泉征）がバーに襲い掛かってきます。この騒動を収めたのは、客として訪れていた野沢（川津祐介）でした。野沢は銀座の高級クラブのマネージャーであり、元弁護士という経歴を持つ人物。彼は由美を自身のクラブに引き取り、新たな人生への道を示します。

銀座のクラブで働き始めた由美は、持ち前の魅力と大胆さで頭角を現していきます。彼女は客とのポーカー勝負で高額なチップを巻き上げ、クラブ内で存在感を増していきます。しかし、その成功は他のホステスたちの反感を買います。そして、クラブのママ（真山知子）からポーカーを禁じられてしまいます。

それでも由美は、店の外でポーカーを続け、さらなる高みを目指します。しかし、ある日、警察の急襲を受け、逮捕されてしまいます。誰かの密告だったのです。野沢の機転によって釈放された由美は、クラブのオーナー社長・加田（西村晃）と出会います。加田は由美に高額な報酬で妾になることを提案し、由美は野沢と相談の上、これを承諾します。野沢は由美への想いを抱きながらも、自身の愛する女性がいることを理由に、この決断を後押しします。

加田の妾となった由美は、彼の愛を受けながら裕福な生活を送ります。しかし、加田は突然の心臓麻痺で亡くなってしまいます。遺産を親族に奪われることを危惧した野沢は、由美が加田の子を妊娠していれば遺産を相続できると考え、由美と一夜を過ごします。そして、加田の親族の前で、由美が妊娠していることを発表します。

莫大な遺産を手に入れた由美でしたが、彼女はその後、子供を堕胎し、静かに母親のもとへ帰っていきます。この結末は、彼女が金銭や権力ではなく、母との絆、そして静かな人生を選び取ったことを示唆しています。

『電氣くらげ』は、単なるエロティック映画の枠を超え、貧困や暴力、社会の歪みの中でたくましく生きる女性の物語として、観る者に強い印象を与えます。増村保造監督独特の演出と、渥美マリの圧倒的な存在感、そして豪華なキャスト陣の熱演が、この作品を不朽の名作たらしめているのです。

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