どっきり花嫁の記

『どっきり花嫁の記』は、与謝野道子による随筆作品で、彼女が歌人・与謝野晶子の次男である与謝野秀と結婚した際の体験を基に書かれています。この作品は、道子が嫁ぎ先である与謝野家で遭遇した様々な出来事を、彼女自身の視点からユーモラスに、そして愛情深く描いています。

物語の中心となるのは、姑である与謝野晶子の存在です。晶子は、明治・大正期の女性解放運動を牽引した人物であり、その奔放で型破りな生き方は、道子にとって大きな衝撃でした。また、与謝野家は非常に大家族であり、秀の兄弟たちの多さにも道子は驚かされます。この随筆では、道子がこれらの環境に適応していく過程が、時にコミカルに、時に感動的に描かれています。

『どっきり花嫁の記』は、1967年に主婦の友社から単行本として刊行され、その後1982年には『どっきり花嫁の記:はは与謝野晶子』として再刊されました。この作品は、単なる嫁姑の物語ではなく、近代日本の激動期を生き抜いた女性たちの姿を、家族という身近な視点から捉えた貴重な記録としても評価されています。

また、『どっきり花嫁』というタイトルで2度テレビドラマ化されています。1度目は1968年と1969年にTBS系「東芝日曜劇場」枠で放送され、若尾文子が道子役を演じました。このドラマは、橋田壽賀子が脚本を手掛け、当時の人気俳優たちが多数出演しました。

2度目は1982年に東海テレビの昼ドラマ枠で放送され、『どっきり花嫁-わが母 与謝野晶子-』というタイトルで、深水真紀子が道子役を、加藤治子が与謝野晶子役を演じました。このドラマでは、稲葉明子が脚本を手掛け、与謝野晶子の生涯も併せて描かれました。

この作品は、与謝野道子の視点を通して、与謝野晶子という一人の女性の生き様や、当時の家族観を浮き彫りにするだけでなく、結婚という人生における大きな転換期を迎えた女性の心情を繊細に描き出しています。読者は、道子の目を通して、時代を超えて共感できる普遍的なテーマを発見することができるでしょう。

『どっきり花嫁の記』は、単なる随筆作品にとどまらず、家族のあり方、女性の生き方、そして時代背景を映し出す鏡として、現代においても多くの読者に愛され続けている作品です。

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