ならず者 (1943年の映画)

『ならず者』（The Outlaw）は、1943年に公開されたハワード・ヒューズ監督・製作によるアメリカ映画である。本作は当初、ハワード・ホークス監督がメガホンを取る予定だったが、製作途中でヒューズが監督を兼任することになったという経緯を持つ。

この映画は、ジェーン・ラッセルにとって映画デビュー作となった作品でもあり、彼女が演じたリオという女性は、その官能的な魅力で大きな話題を呼んだ。ラッセルの演技は、当時としては非常に大胆なものであり、製作側とアメリカ映画協会との間で激しい論争を引き起こすことになった。その結果、公開は延期されたり、上映が制限されたりといった出来事もあった。

映画の物語は、アメリカ西部開拓時代を舞台に、悪名高きアウトローたちの愛憎劇を描く。アウトローであるビリー・ザ・キッドと、保安官パット・ギャレット、そしてドク・ホリデイという三人の男を中心に物語は展開する。

ビリー・ザ・キッドは、保安官であるパット・ギャレットによって逮捕される寸前、旧友であるドク・ホリデイに助けを求める。ドクは、パットを出し抜こうとするが、その計画は失敗に終わる。ビリーは正当防衛を主張するも、発砲騒ぎを起こし重傷を負ってしまう。やむなく、ドクの家に匿われることになる。そこでドクの愛人であるリオと出会い、二人は次第に惹かれ合っていく。

ドクは、かつての仲間であったパットと対立し、さらに自分の愛人リオとビリーが恋仲になったことを知る。そのことに激しい嫉妬と怒りを覚えるものの、同時にパットの追跡から逃れるためにビリーと協力せざるを得ない状況に陥る。

リオは、パットに二人の居場所を通報する。ドクは逮捕されるが、ビリーもリオにリンチを加えようとしたところを逮捕される。しかし、インディアンの襲撃により、パットは二人の手錠を外す。

ドクはビリーに「女か馬か、どちらを選ぶのか」と迫る。ビリーは明確な答えを避けるが、ドクは怒りに任せてビリーを銃撃する。二人は馬を共有することで決着をつけようとするが、その場にいたパットは、二人の行動に激昂し、ドクを撃つ。

重傷を負ったドクは、治療を拒否し、そのまま息を引き取る。パットはビリーに「真人間になるべきだ」と諭し、ピストルを交換しようとする。しかし、これはパットの策略であり、ビリーを殺害しようとする罠だった。

しかし、パットの拳銃は弾を発射せず、逆にビリーに縛り上げられる。実は、ビリーはピストル交換の際に、使用不能のドクの拳銃と自分の拳銃を入れ替えていたのだ。パットは呆然とする中、ビリーとリオは姿を消し、物語は幕を閉じる。

この映画には、ジャック・ビューテル、ジェーン・ラッセル、トーマス・ミッチェル、ウォルター・ヒューストンなど、当時の著名な俳優たちが多数出演している。特に、ジェーン・ラッセルの官能的な演技は、映画史に残る伝説として語り継がれている。

映画音楽には、チャイコフスキー作曲の交響曲第6番『悲愴』第1楽章の主題が使用されている点も、注目すべきポイントである。オープニングクレジットやラブシーンで流れるこの音楽は、映画の雰囲気をさらに高める役割を果たしている。

『ならず者』は、激しい銃撃戦や、複雑な人間関係、そしてアウトローたちの生き様を描いた、見応えのある西部劇映画として、高い評価を受けている。現在でも、映画史における重要な作品の一つとして認識されており、多くの映画ファンから愛され続けている。

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