なんとなくなんとなく

ザ・スパイダースによる楽曲「なんとなくなんとなく」は、日本のポピュラー音楽史において特筆すべき一曲であり、グループ・サウンズ黄金期を彩った作品の一つです。本作は1966年 12月25日にシングル盤としてリリースされました。作詞および作曲は、グループの音楽的支柱であったかまやつひろし氏が手がけています。

楽曲の特徴と成功

この楽曲は、ゆったりとしたテンポと心地よいカントリー調のメロディを基調としています。サウンド面では、大野克夫氏による印象的なスティール・ギターの演奏が彩りを添え、リードボーカルを務めた井上順氏の温かみのあるソロ歌唱が聴く者に深い印象を与えます。ザ・スパイダースは先行して発表した「夕陽が泣いている」で既に大きな成功を収めていましたが、「なんとなくなんとなく」もそれに続くヒットを記録し、彼らの人気と実力を確固たるものとしました。

コンパクト盤に収録された異バージョン

本シングル盤と同時期の1966年 12月25日に発売されたコンパクト盤『ザ・スパイダースの大進撃』には、「なんとなくなんとなく」の興味深い別バージョンが収録されています。このバージョンでは、歌詞が全て鹿児島弁にアレンジされており、オリジナルとは異なる趣を楽しむことができます。

B面曲「ブーン・ブーン」

シングル盤のB面には、アメリカの偉大なブルースミュージシャン、ジョン・リー・フッカーが作詞・作曲した名曲「ブーン・ブーン (Boom Boom)」のカバーが収められました。このカバーバージョンは、英国のロックバンド、ジ・アニマルズがヒットさせた演奏を参考に制作されたと言われています。リードボーカルはA面とは異なり、かまやつひろし氏が英語の歌詞のまま担当しており、彼の音楽的多才さを示す一例となっています。

レコードジャケットのデザイン

当時のシングルレコードのジャケットは、ザ・スパイダースのメンバー7人全員の顔写真に加え、電話で語り合う若い男女のイラストが大きく描かれた、非常に明快かつカラフルで目を引くデザインでした。これは当時の若者文化や流行を反映したものであり、楽曲の明るいイメージにも合致しています。

音楽的な類似性

音楽評論家の間などでは、この「なんとなくなんとなく」が、イギリスの著名なロックバンド、ザ・ローリング・ストーンズが1965年に発表し世界的な成功を収めたバラード「As Tears Go By (アズ・ティアーズ・ゴー・バイ)」と、メロディラインや雰囲気に極めて高い類似性が見られる点がしばしば指摘されます。

後世への影響とメディアでの使用

「なんとなくなんとなく」は、そのキャッチーなメロディと普遍的な歌詞から、発売から数十年を経てもなお多くの人々に親しまれ、様々なメディアで活用されています。

CMソング: 1995年にフルモデルチェンジされた日産・パルサー（N15前期型）のテレビCMで、井上順氏のソロバージョンが採用されました（野村宏伸、鶴田真由出演）。また、2011年には女優の宮崎あおいさんが「earth music & ecology」のCMでこの曲を歌唱し話題となりました。2015年には日本健康管理協会のCMに、2022年にはアサヒビールのチューハイ「贅沢絞り」のCMに、安藤裕子氏と東郷清丸氏の歌唱によるバージョンが使用されています（中村倫也出演）。
番組テーマ曲: テレビ朝日系列で放送されている徳光和夫氏出演の旅番組「路線バスで寄り道の旅」ではオープニングテーマとして長年使用されています。同じく徳光氏がパーソナリティを務めるニッポン放送のラジオ番組「徳光和夫とくモリ!歌謡サタデー」でも、2016年4月30日の放送回にて、元プロ野球選手・監督の山本功児氏がこの歌をよく口ずさんでいたというエピソードと共に紹介されました。NHK Eテレで2016年から放送されている旅番組「ふるカフェ系ハルさんの休日」では、つじあやの氏による歌唱バージョンが主題歌として使用されています。
アニメ挿入歌: 2023年に放送されたTVアニメ『君は放課後インソムニア』の第12話では挿入歌として起用されました。このアニメバージョンは、山下誠一郎氏、田村好氏、Lynn|lynn氏、藤原夏海氏、諸星すみれ氏といった主要キャストが歌唱し、作曲家の林ゆうき氏が編曲を手がけています。

主なカバーバージョン

「なんとなくなんとなく」は多くのアーティストによってカバーされています。代表的なものとして以下が挙げられます。

工藤静香（2002年、アルバム『昭和の階段 Vol.1』に収録）
* つじあやの（2004年、アルバム『COVER GIRL』に収録）