ひかりごけ事件とは？意味をやさしく解説

ひかりごけ事件

ひかりごけ事件は、1944年5月に北海道目梨郡の羅臼町で起きた死体損壊事件で、食人という絶望的な状況が絡んでいます。当事件は、陸軍の徴用船が難破することから始まりました。一冬を知床半島で過ごした船長が、極限の状況の中で船員の遺体を食べて生き延びたという衝撃的な出来事です。この事件は、日本の歴史の中でも初めて食人行為に対して刑罰が科されたケースとして知られています。

事件の経緯

1943年12月、日本陸軍が徴用した船が7人の乗組員を乗せ、根室港から小樽へ向かう途中、知床岬で座礁しました。7名の乗組員は奇跡的に岩に漂着し、真冬の厳しい寒さの中で生き延びることを試みました。しかし、食料の不足に加えて過酷な環境が彼らを襲い、最年少の船員が死亡しました。船長は、その遺体を食べて生き延びたのです。

1944年の2月、船長はある漁民一家に助けを求めて現れました。彼は、艱難を乗り越えたにもかかわらず、その言動が怪しまれる結果となります。警察と軍部は食人の疑いを持ち、捜査を開始しました。捜査が行われた途中で、他の船員の遺体が見つかり、さらに食人行為が暗示されます。

捜査と裁判

1944年6月、船長は殺人罪ではなく、死体損壊の容疑で逮捕されました。日本の法律には食人に関する明確な規定が存在しないため、船長はあくまで死体損壊罪として裁かれることになります。彼は、食人行為自体は認めましたが、殺人については否認しました。

判決は1954年に下され、船長は心神耗弱の理由により懲役1年の刑に処されました。この事件の詳細はその後も不明確で、裁判記録や捜査記録は戦後の火災によって失われました。これにより、事件に関する謎や憶測が広がり、様々な憶測が流れることとなったのです。

風評と船長の心情

この事件の後、船長に対する風評も広まりました。特に、船長が他の乗組員を殺害したという噂が立ち、彼の名誉は傷つきました。船長は、取材を続けたジャーナリストに対し、身体と精神的に極限の状態に追い込まれ、食人に至った経緯を語っています。彼は、食人行為がどのようなものだったのか、あまり記憶がないと述べつつも、その行為については認識を持っていました。

彼は晩年、再びペキンノ鼻を訪れたかったと語っていましたが、その願いは叶いませんでした。事件を基にした小説「ひかりごけ」は1944年の事件を題材とし、後に多くの関連作品が創作され、事件への関心を呼び起こしました。