ひとびとの跫音

『ひとびとの跫音』

『ひとびとの跫音』は、著名な作家である司馬遼太郎が1979年から1980年にわたり月刊誌『中央公論』に連載した長編小説です。この作品は1981年に中央公論社から上・下巻として刊行され、その年の読売文学賞小説賞を受賞しました。

概要

物語の中心となるのは、正岡子規の妹である律の養子、正岡忠三郎です。彼は阪急電鉄の車掌、並びに阪急百貨店の職員として働いていました。忠三郎は、友人であるぬやま・ひろし（本名：西沢隆二）との関わりを通じて、様々な人々との交流や友情、思い出を描いています。

この作品は、司馬遼太郎の他の著作とは一線を画し、特に昭和の戦後の情景を描写している点が注目されます。一般的に知名度が低い人物を主人公に据え、エッセイと小説の境界を巧みに行き来する司馬の筆致は、独特で魅力的なスタイルと評価されています。

作品の特徴

『ひとびとの跫音』では、忠三郎の人生と彼を取り巻く人々の物語を通じて、戦後の日本の文化や価値観を浮き彫りにしています。物語の中では、忠三郎の職業生活や、友人たちとの交流が重要なテーマとして描かれており、読者は時代背景や人間関係を深く味わうことができます。

特に、司馬遼太郎特有の詳細な描写力と豊かな人間観察が光り、登場人物たちの個性や生き方が丁寧に表現されています。人物たちの感情や苦悩、喜びが繊細に描かれており、読者は彼らの物語に引き込まれていきます。

書誌情報

『ひとびとの跫音』は、初版が1981年7月に中央公論社から発行され、以降、電子書籍版や文庫本でも出版されています。特に文庫版は、解説に桶谷秀昭を迎えつつ、1983年に中公文庫から上・下巻がそれぞれリリースされました。後に1995年に改版として再出版されており、今も多くの読者に親しまれています。

• - 単行本：中央公論社（1981年、上・下）
• - 電子書籍版：中央公論新社（2009年、全1巻） ISBN 4-12-004050-X
• - 司馬遼太郎全集（50）：文藝春秋（1984年） ISBN 4-16-510500-7
• - 文庫本（中公文庫）：1983年 ISBN 4-12-201055-1（上）、ISBN 4-12-201063-2（下）

(改版1995年：上 ISBN 4-12-202242-8、下 ISBN 4-12-202243-6)

このように、司馬遼太郎が描く『ひとびとの跫音』は、日本の戦後を背景に、個々の人間ドラマを紡いだ作品であり、文学に対する深い洞察を与えてくれます。

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