ひとみ (人工衛星)

ひとみ - 第26号科学衛星 ASTRO-H

概要

ひとみは、日本が2016年に打ち上げたX線天文衛星であり、正式には第26号科学衛星ASTRO-Hと呼ばれます。宇宙科学を推進する宇宙航空研究開発機構（JAXA）と、国内外の大学や研究機関との国際協力によって設計されました。しかし、運用開始早々に姿勢制御の異常が発生し、短期間で運用を終了するという残念な結末を迎えました。

この衛星は、後にひとみと命名され、X線天文学の分野において重要な役割を果たすことを期待されていました。打ち上げは2016年2月17日に種子島宇宙センターからH-IIAロケットを用いて成功を収めましたが、運用に入ると想定外の事態が起こりました。

衛星の背景

ひとみは、日本で6番目のX線天文衛星であり、具体的には「New exploration X-ray Telescope（NeXT）」の一環として開発が進められていました。計画は2008年に正式に承認され、アメリカのNASAや欧州宇宙機関（ESA）、カナダ宇宙庁（CSA）を始めとする国際的な協力のもと行われました。約310億円の日本の負担で、宇宙探査の最前線へと挑戦したのです。

打ち上げと運用

ひとみは2016年2月12日に打ち上げる予定でしたが、悪天候の影響で延期され、最終的に17日に成功裏に打ち上げられました。この時の衛星の総重量は約2.7トン、分展後の全長は14メートルに達し、これまでの日本の天文衛星の中では最大規模となったことが特徴です。

打ち上げ後、ひとみは正常に運用を開始し、最初のクリティカル運用期間を問題なく終えました。しかし、それ以降に予定されていた観測機器の初期機能確認中に、姿勢制御系の異常が発生しました。この状態は3月26日に通信途絶となり、その後の復旧は不可能となりました。

事故とその原因

ひとみの異常回転は、地上からの姿勢制御コマンドを受信した後に始まりました。姿勢制御系が誤った状態を認識し、そのエラーが連鎖していく中で、高速回転へと突入したと考えられています。JAXAでは、ひとみが複数の物体に分解したことが確認され、原因の調査を進めました。

液晶ディスプレイ内部のひとみは、事前に決定されたスラスタ制御のパラメータが不適切であったため、最終的に分解という結果を招いたとされています。これは、運用計画の文書に不備があったり、適切な検証が行われなかったことが影響したとされます。

後継機と今後の展望

ひとみの教訓を基に、JAXAは後継機の開発を決定しました。この新しいX線分光撮像衛星（XRISM）は、2023年9月7日に打ち上げられ、ひとみの経験を活かして運用されることになっています。ひとみの失敗から得た教訓が、今後の宇宙探査技術の向上に寄与することが期待されています。

結び

ひとみの打ち上げとその後の短命な運用は、宇宙探査の厳しさを物語っています。しかし、失敗から学ぶことは数多くあり、これからの後継機や新たな挑戦に生かされていくでしょう。日本のX線天文衛星としての役割を今後も注目していきたいと思います。

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