ひのまる劇場

ひのまる劇場：短命に終わった連載と、個性豊かなキャラクターたち

『ひのまる劇場』は、漫画家・江口寿史氏によって1981年に週刊少年ジャンプで連載されたギャグ漫画です。前作『すすめ!!パイレーツ』の大ヒットを受け、新たな挑戦として連載されましたが、読者アンケートで低迷し、わずか半年で幕を閉じました。作者自身も不遇の作品として長く語らなかった作品として知られています。

波乱の連載と単行本化

『ひのまる劇場』は、当初は探偵、白智小五郎と助手の戸田光国が活躍する物語でしたが、物語の中心は刑務所から出てきた小学3年生、すし丸へと移り変わっていきます。すし丸の圧倒的な存在感と、周りの個性的なキャラクターたちが織りなすドタバタ劇が展開されます。しかし、連載は人気が出ず、わずか半年で終了。単行本化の際にはページ数が足りず、読切作品や作者の近況レポートなどを加えて2巻で出版されました。

個性あふれるキャラクターたち

『ひのまる劇場』の魅力の一つは、個性的なキャラクターたちです。

白智小五郎: 100以上の職業を持つ3流探偵。眼鏡に口髭、パイプという風貌で、すし丸登場後は脇役に甘んじます。
戸田光国: 白智を慕う好青年。実は怪盗マウスキッドの正体です。
すし丸: 網走こども刑務所から出てきた小学3年生。黒いスーツにサングラスといういでたちで、小学校の番長グループの親分となります。作者の自画像をモデルにしていると言われています。
鈴木文江: 喫茶店「喫茶MiYako」を営む美人店主。すし丸を溺愛しています。
鈴木都: 文江の娘。鈴木家の常識人です。
鈴木米丸: 文江の夫。網走刑務所から出所してきます。
湯桃手尻乳助兵衛（助ちゃん）と転沢曲田辺角の進（角ちゃん）: すし丸の子分たち。
森田健作: リーゼント頭が特徴の小学生。宇宙戦艦ヤマトを彷彿とさせるリーゼントから「リーゼント波動砲」を発射します。
流星五郎: ハゲの大番長。「理性の結び目」と呼ばれる独特の髪型が特徴です。
岩咲ひろみ: すし丸の担任。すし丸一家から酒を飲まされ、常に酔っ払っている状態です。

他にも多くの個性的なキャラクターが登場し、独特の世界観を作り上げています。

パロディと他の作品との繋がり

『ひのまる劇場』は、当時の流行作品やテレビCMなどをパロディとして取り入れています。750ライダー、Xボンバー、テニスボーイ、機動戦士ガンダム、宇宙戦艦ヤマトなど、当時を知る世代には懐かしさを感じさせる要素が盛り込まれています。

また、江口寿史氏の他の作品との繋がりも深く、登場人物が『ストップ!!ひばりくん!』や『ラブ＆ピース』などにも登場します。白智小五郎は江口氏の作品に何度も登場する定番キャラクターです。

読切作品との関連

『ひのまる劇場』は、1978年に発表された読切作品「名探偵はいつもスランプ」を元に制作されました。「名探偵はいつもスランプ」は、白智小五郎と戸田光国が怪盗マウスキッドと対決するという物語で、『ひのまる劇場』の原型と言える作品です。

まとめ

『ひのまる劇場』は、短命に終わった連載という不遇な過去を持つ作品ですが、個性的なキャラクターたちとテンポの良いギャグ、そして当時の流行を巧みに取り入れたパロディの数々は、多くの読者に愛され続けています。他の江口寿史作品と比較しても、独特の雰囲気を持つ作品として知られており、近年では復刻版や総集編も発売され、改めて注目を集めています。その背景にある、作者の試行錯誤や作品への想いを理解することで、『ひのまる劇場』の魅力はさらに増すことでしょう。

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