ふと、或る夜、生き物みたいに歩いているので、演奏家たちのOKをもらった

浅川マキの12枚目にあたるアルバム、『ふと、或る夜、生き物みたいに歩いているので、演奏家たちのOKをもらった』は、1980年12月21日に東芝EMIのエキスプレス・レーベルから発表されました。現在のユニバーサルミュージック合同会社内EMIレコーズ・ジャパンレーベルにあたります。

このアルバムは、それまでのスタジオ録音作品とは異なり、FMラジオ放送のために録音された音源やライブ会場での演奏記録を中心に編纂されたコンピレーション作品です。過去の貴重な音源をまとめた、いわゆるレアトラック集として位置づけられています。特筆すべきは、これらの記録音源を浅川マキ自身が聴き、アルバムとして世に出すことを提案、企画したという制作経緯です。

収録されている楽曲は、一曲を除いてすべて、すでに発表済みの曲の別テイクやライブバージョンです。唯一、アルバムに初収録されたのは、ジャズのスタンダードナンバーである「You Don't Know What Love Is」です。ただし、この曲はピアノ演奏のみで構成されており、浅川マキ本人は歌唱していません。この演奏はピアニストの渋谷毅氏によるもので、彼のレパートリーであり、彼のソロアルバムにも収められています。

ちなみに、本作品のタイトルや発売年については、長年にわたり浅川マキの公式ウェブサイトなどで「ふと或る夜、生き物みたいに歩いていたので、演奏者たちのOKをもらった」（1981年作品）と誤って表記されていた時期がありました。

2011年には、浅川マキの過去のアルバム作品がデジタルリマスタリングを施されて再発売されました。同年1月には1970年代の10作品、そして6月には本作を含む1980年代の14作品が、オリジナルLP盤の仕様を可能な限り再現した紙ジャケットで復刻されました。この紙ジャケット復刻盤では、当時の歌詞カードやレコードレーベルのデザインが再現されています（一部作品では例外や色合い、紙質の差異が見られます）。しかし、オリジナルLPに付属していた帯は再現されず、紙ジャケットシリーズで統一された新たなデザインの帯が採用されています。また、『WHO'S KNOCKING ON MY DOOR』（1983年）以降の作品に本来付属していた、帯の代わりとなるステッカーも復刻盤では再現されていません。

本作に収められた楽曲は以下の通りです。録音された場所や時期も記されています。

Side A
今夜はおしまい ＜西荻窪「アケタの店」(1980年2月)＞
作詩・作曲：浅川マキ（オリジナル：『MAKI VI』収録）
二人の女のうた ＜西荻窪「アケタの店」(1980年2月)＞
作詩・作曲：浅川マキ（オリジナル：『流れを渡る』収録）
あなたに〜You Don't Know What Love Is ＜西荻窪「アケタの店」(1980年2月)＞
あなたに／作詩・作曲：浅川マキ（オリジナル：『流れを渡る』収録）
You Don't Know What Love Is／作詞：G.Depaul／作曲：D.Raye
あの男（ひと）が死んだら WHEN THAT MAN IS DEAD AND GONE ＜FM放送局 (1979年1月・放送局不明)＞
作詩・作曲：Irving Berlin／日本語詩：浅川マキ（オリジナル：『裏窓』収録）
Side B
ボロと小鉄〜あの男がピアノを弾いた ＜京大西部講堂 (1980年6月)＞
ボロと小鉄／作詩：Oscer Brown Jr.／作曲：N.Cautis-O.Brown Jr.／日本語詩：浅川マキ（オリジナル：『MAKI VI』収録）
あの男がピアノを弾いた／作詩・作曲：浅川マキ（オリジナル：『ONE』収録）
ふしあわせという名の猫 ＜京大西部講堂 (1980年6月)＞
作詩：寺山修司／作曲：山木幸三郎（オリジナル：『浅川マキの世界』収録）

演奏には、浅川マキの歌唱に加え、以下のミュージシャンが参加しています。

浅川マキ - Vocals
渋谷毅 - Piano
川端民生 - Bass
トニー・大西 - Drums
杉本喜代志 - Guitar
坂田明 - Alto Sax

また、ディレクターの永野久氏をはじめ、野中ユリ氏（画）、杉田誠一氏（写真）、板垣驥氏（アートディレクション）、吉野金次氏（ミキシング）、柏原卓氏（録音エンジニア）など、多くのスタッフが制作に携わりました。さらに、アケタの店や京大西部講堂、TAKE ONE STUDIOといった場所や関係者にも謝意が示されています。

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