ふるさと (1983年の映画)

映画『ふるさと』の詳細

『ふるさと』は、1983年に公開された日本の映画であり、配給は東宝東和によって行われました。監督は神山征二郎氏で、主演には加藤嘉氏が起用されています。この作品は、岐阜県揖斐郡徳山村が徳山ダムの建設によって湖底に沈む過程を描いています。映画は平方浩介氏の著作『じいと山のコボたち』を原作としており、認知症を患う老人と少年との心温まる交流が描かれています。作品中では、消えていく美しい自然が特に強調されています。

『ふるさと』は、文化庁の優秀映画奨励賞など多くの賞を受賞しており、加藤嘉氏はモスクワ国際映画祭で最優秀主演男優賞を受賞しました。映画の記念碑は、映画の舞台である徳山村の本郷地区に設置されましたが、ダムの水没により2006年に徳山会館へ移設されました。また、映画の上映から30年を記念して、2013年12月にはDVD化され、多くのファンの手に渡りました。

あらすじ

物語は、妻を亡くした老人の伝三（加藤嘉）が認知症に苦しむ様子から始まります。彼は息子の伝六（長門裕之）と花（樫山文枝）のことすら忘れ、隔離された状態で日々を過ごしています。しかし、隣に住む少年、千太郎（浅井晋）との出会いが彼の運命を変えることになります。伝三はアマゴ釣りの名手であり、少年に釣りを教える中で再び心の豊かさを取り戻し始めます。

夏休みの期間中、伝三は千太郎と一緒に釣りを楽しみ、過去の美しい記憶が呼び起こされ、認知症の症状が軽減していきます。しかし、長雨が続くと釣りに行けなくなり、再び彼の認知症が悪化します。伝六はおじいさんを隔離し、鍵をかけますが、伝三は怒りのあまり家を脱出。再会を期待していた千太郎からの誘いを受け、二人で秘境の長者ヶ淵へアマゴ釣りに出かけます。

美しい自然の中で彼らは楽しい時間を過ごしますが、突如として伝三は体調を崩してしまいます。千太郎は彼の教えを胸に、村へ助けを呼びに行きます。その間、伝三は昔の思い出にふけりながら時間を過ごし、最後には村人に助けられながら村へ戻り、夕暮れの美しい光景を見つめながら息を引き取ります。

物語のクライマックスでは、徳山小学校での最後の文化発表会が描かれ、全員で「故郷」を合唱する感動的なシーンが展開されます。ラストでは、沈む村を背にしながら、伝六や千太郎が姿を消し、花の胸には伝三の遺骨が抱かれていました。

キャストとスタッフ

映画には加藤嘉氏をはじめ、長門裕之氏、樫山文枝氏、浅井晋氏といった実力派の俳優が多数出演しています。また、監督の神山征二郎氏は脚本も手掛けており、原作は平方浩介氏です。音楽は針生正男氏が担当し、美しいメロディが作品を彩っています。

撮影地として、戸入地区が伝三らの家、商店街は本郷地区が使用され、物語の舞台がしっかりと再現されています。実在しない「長者ヶ淵」にはロケ地として長者平が使われました。撮影当時、徳山ダムの工事は始まっていなかったため、本格的な工事の映像は他の地域で撮影されました。

有名なエピソード

注目すべきは主演の加藤嘉氏の自然な演技であり、その演技力によって審査員たちはまるで本物の認知症の老人を使用しているかのように感じたと言われています。彼の存在は映画のクオリティをさらに高める要因となっています。

この映画は、消えゆく自然と人との絆を描いた作品として、今なお多くの人々の胸に深く刻まれています。

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