ぶらんこ (ルノワールの絵画)

ルノワールの名作『ぶらんこ』：光と影が織りなす印象派の世界

『ぶらんこ』（仏: La Balançoire）は、フランスの画家ピエール＝オーギュスト・ルノワールが1876年に描いた油彩作品であり、現在はパリのオルセー美術館に所蔵されています。この作品は、ルノワールがモンマルトルのコルト通りにアトリエを構えていた頃、アトリエ裏の庭で描かれました。

1877年の第3回印象派展に出品されたものの、当時の評価は芳しくありませんでした。しかし、ルノワールの友人であり、画家でもあったギュスターヴ・カイユボットによって買い取られ、今日まで大切に保存されています。

作品の魅力

『ぶらんこ』は、木漏れ日が降り注ぐ庭で、ブランコに乗る女性とそれを取り巻く人々を描いています。女性は、顔を少しそむけ、どこか照れくさそうな微笑みを浮かべています。この表情が、作品に独特の雰囲気を与えています。

ブランコに乗る女性のモデルは、ルノワールのアトリエ近くに住んでいたジャンヌという女性です。彼女は、同時期に描かれた『ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会』にも登場しており、ルノワールに街でスカウトされたと言われています。栗色の巻き毛が印象的なジャンヌは、白地に紫がかったブルーのリボンがあしらわれたドレスを身につけています。このドレスは、腰の部分にボリュームをもたせた「バスル・スタイル」と呼ばれるもので、1870年代に流行したスタイルです。

女性の前に立つ男性は、青い上着を着用しています。その傍らでは、幼い女児が女性を見上げています。そして、後方には黄色い服を着た男性が、青い上着の男性に視線を送っています。さらに、小径の奥には、何組かの男女が描かれており、当時の人々の生活風景を垣間見ることができます。

印象派の技法

本作は、印象派の画家たちが追求した、光の表現が際立っています。木漏れ日の表現や、人物の肌に映る光の描写など、細部にまでこだわった表現が、作品に奥行きとリアリティを与えています。また、筆致の粗さをあえて残すことで、絵画の質感を強調し、見る者に臨場感を与えています。

ルノワールの『ぶらんこ』は、印象派の技法と、当時の人々の生活風景を巧みに融合させた作品として、今日でも多くの人々を魅了し続けています。

参考文献

* 島田紀夫『もっと知りたいルノワール 生涯と作品』東京美術、2009年。ISBN 978-4-8087-0872-6。

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