ホルマリン

ホルマリン（Formalin）について

ホルマリンとは、ホルムアルデヒドの水溶液であり、無色透明で刺激臭を持つ化学物質です。この物質は生物に対して有害でありながら、固定や防腐処理の分野で広く利用されています。特に、医学や生物学において、生物の組織標本作製に欠かせない存在です。ホルマリンは日本薬局方によって、35〜38%のホルムアルデヒド水溶液として市販されていますが、通常はこの原液を5〜10倍程度に希釈して使用されます。例えば、10倍に希釈した場合、ホルムアルデヒドの含有量は約3.5〜3.8%となります。

使用目的

組織固定用

ホルマリンの主な利用目的は、組織の固定です。生物の細胞に浸透することで、ホルムアルデヒドが蛋白質のアミノ基と結合し、架橋反応を起こすため、細胞は死滅し、腐敗や死後変化が止まります。このプロセスにより、組織の構造が保存され、顕微鏡観察が可能になります。ホルマリン処理後の生物体は、通常、数パーセントの収縮が見られますが、脂肪等は流れ出てしまいます。

また、ホルマリンはDNAの抽出にも利用されますが、アミノ基と結合するため、あまり好ましくないとされています。このため、形態観察用とDNA抽出用に異なる処理を行うことがあります。

消毒用

ホルマリンは、消毒にも利用されます。病院での器具の消毒や、養蚕や畜産の現場での施設消毒に用いられています。しかし、水産業での使用は注意が必要で、生け簀に直接ホルマリン原液を散布する方法は推奨されておらず、勧告が出されていることもあります。

安全な取り扱い

ホルマリンは毒劇法によって医薬用外劇物に指定されており、取り扱いや廃棄に際しては特別な注意が求められます。ホルムアルデヒド含有量が1%以上のものはそのまま廃棄できないため、1975年以降は特定の無毒化処理が義務付けられています。これには酸化法、焼却法、活性汚泥法などが含まれます。

無毒化方法

無毒化には様々な方法があります。一般的には、以下のような処理が行われます:
1. 酸化法: 水で希釈したホルマリンに次亜塩素酸を加え、分解させる方法。
2. 水酸化ナトリウム法: pHをアルカリ性にしたホルマリンに過酸化水素水を加える方法。
3. 水酸化カルシウム法: 消石灰を加え、ホルムアルデヒドが糖に変化することを利用する方法。

これらの手法は、環境への影響を抑えるためにも重要です。

結論

ホルマリンは、強力な生物固定剤として広く利用されている一方で、その取り扱いには細心の注意が必要です。安全な使用と廃棄のためには、適切な知識と技術が求められます。研究の進展とともに、より無害な代替品の開発が進むことが期待されますが、現在のところホルマリンは重要な役割を果たし続けています。

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