ぼんとリンちゃん

概要

『ぼんとリンちゃん』は、2014年 9月20日に公開された日本の青春映画です。監督は小林啓一が務め、主演を佐倉絵麻と高杉真宙が担当しています。本作は、ボーイズラブ（BL）をはじめとするオタク文化を深く愛好する幼なじみである四谷夏子（通称「ぼん」）と友田麟太郎（通称「リン」）が、連絡が途絶えてしまった親友を探すため東京へと旅立つ姿を描いています。作中では、秋葉原に位置するとらのあな秋葉原店BやAKIBAカルチャーズZONEなどで撮影が行われるなど、オタク文化の聖地が舞台の一部となっています。

あらすじ

地方都市に暮らす16歳と62ヶ月（自称）の大学生、四谷夏子（ぼん）と、幼なじみの友田麟太郎（リン）。ふたりは共にBLの同人誌やアニメ、ゲームなどをこよなく愛する仲です。ある日、東京へ行ったきり音信不通となった親友、斉藤みゆ（作中では独特な愛称で呼ばれる）を探しに、ぼんとリンは東京へと向かいます。オンラインゲームで知り合った会田直人（通称「べびちゃん」）の協力を得て、みゆが交際相手と同棲していると思われる部屋へとたどり着きますが…。

キャスト

四谷夏子：佐倉絵麻
友田麟太郎：高杉真宙
会田直人：桃月庵白酒
斉藤みゆ：比嘉梨乃
蟹江田敬三：まつ乃家栄太朗
四谷佐和子：月岡果穂
友田くるみ：門前亜里

スタッフ

監督・脚本・撮影：小林啓一
プロデューサー：原田博志、財前健一郎
アソシエイト・プロデューサー：宮崎紀彦
製作担当：松嶋翔
録音：日高成幸

作品の特徴と制作エピソード

本作は、現代の若者文化、特にオタク文化の一面をリアルに描き出しています。撮影場所には、秋葉原の電気街やサブカルチャー関連施設が多数使用され、作品の世界観を強く印象づけています。また、劇中の同人誌制作には、星野リリィ、ねこ田米蔵、ヨネダコウ、千葉リョウコ、秋葉東子、彩景でりこ、草間さかえといった漫画家や、リブレ出版が協力。ゲーム分野ではソニー・コンピュータ・エンタテインメントの「ICO」やシャーベットソフトの「制服天使」が登場するなど、多岐にわたるカルチャーからの協力が得られています。

主演キャストに関するエピソードも複数語られています。高杉真宙が演じたリンの衣装は、アニメ『化物語』の登場人物である阿良々木暦をイメージして独自にデザインされたもので、中二病的な要素を表現するためでした。高杉自身、この衣装を非常に気に入り、着用すると気分が高揚すると語っています。また、彼はリン役について、脚本を読んだ際に「これこそ自分自身だ」と感じたと繰り返し述べており、舞台挨拶などでオタク関連の話題を振られることに対しても「吹っ切れた」と明かしています。ぼん役の佐倉絵麻も、インタビューで自身の「もともとオタク気質である」ことを語っており、監督からは、ぼんとリンそれぞれに実在するモデルが存在することが明かされています。

評価と受賞歴

『ぼんとリンちゃん』は、批評家から高い評価を獲得しました。映画評論家のくれい響は本作を「天才監督誕生」「これぞ2014年ベストワン！」と絶賛し、森直人、ミルクマン斉藤、なかざわひでゆきといった他の評論家からも称賛の声が寄せられました。

本作は複数の映画賞を受賞しています。

2014年度日本映画監督協会新人賞（小林啓一）
第36回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞（佐倉絵麻、高杉真宙）
第18回上海国際映画祭アジアン・ニュー・タレントアワード
優秀女優賞
優秀撮影賞

書籍化と音楽

映画のノベライズ版として、竹書房より『ぼんとリンちゃん』が出版されています（ISBN 978-4-8124-8848-5）。この小説版は、映画本編では描かれなかった前日譚と後日譚が収められており、特に前日譚では、ぼん、リンに加え、みゆのエピソードも掘り下げられ、登場人物たちの背景にある事情がより詳しく描かれています。みゆ役の比嘉梨乃も、トークイベントでみゆが抱える辛い過去について言及しており、その詳細が小説で明らかになることが示唆されました。小説版のカバーイラストは、『おとめ妖怪ざくろ』などで知られる星野リリィが描き下ろしています。なお、小説版には一部に誤植が見られ、購入者から指摘があったことも伝えられています。

作中では、ボーカロイド楽曲が多数使用されており、作品に独特の彩りを添えています。

主題歌：「迷子のリボン」（作詞・作曲・編曲：40mp、歌：初音ミク）
その他楽曲：「ハジメテノオト」「未来の歌」（作詞・作曲・編曲：malo、歌：初音ミク）、「巨大少女」（作詞・作曲・編曲：40mp、歌：初音ミク）、「白い雪のプリンセスは」「鎖の少女」「モノクロ∞ブルースカイ」「ショットガン•ラヴァーズ」（作詞・作曲・編曲：のぼる↑、歌：初音ミク）、「恋はきっと急上昇☆」（作詞・作曲・編曲：のぼる↑、歌：GUMI）

ロケ地

とらのあな秋葉原店B
AKIBAカルチャーズZONE
グッドスマイルカフェAKIBAカルチャーズZONE内
浅草地下商店街
もつ福赤坂店
* 渋谷道玄坂

これらの要素が融合し、『ぼんとリンちゃん』は、単なる青春ロードムービーに留まらず、特定の文化を愛する若者の心情や交流を丁寧に描いた作品として、多くの観客や評論家から注目を集めました。

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