みはし型巡視船

みはし型巡視船：日本の海上警備を担った高速巡視船

みはし型巡視船は、海上保安庁が運用した高速巡視船の船級です。PS型に分類され、公称船型は180トン型。ネームシップの配置替えによる改名から、あきよし型、しんざん型とも呼ばれます。本型は、領海警備の高度化と犯罪船舶の外洋化・高速化への対応として建造されました。

開発の背景

昭和50年代、海上保安庁は30メートル型PC巡視艇23隻を運用していました。これらの艇は高速性を有し良好な運用実績を残しましたが、増加する外洋犯罪に対応するには航続距離と耐航性の向上が課題でした。1985年の日向灘不審船事件では、不審船の捕捉に失敗。この経験から、外洋で長時間の高速航行が可能な巡視船の必要性が明確になりました。みはし型は、この必要性に応えるべく開発されました。

船体設計

耐航性の向上を図るため、船体長を延長することが重要とされました。復原性を確保しつつL/B比（船体長さ／船体幅の比率）を大きくするため、幅を最小限に抑え、全長46メートル、幅7.5メートルを計画。諸事情により全長は43メートルとなりました。

船型は、30メートル型PCのV型高速艇をベースに、波浪衝撃の緩和を目的として船首部を丸型高速艇の設計と組み合わせたハイブリッド型を採用。軽量化のため、船体は30メートル型PCと同じアルミニウム合金製です。溶接構造の採用により、建造効率の向上と軽量化を実現。この設計は、後の高速巡視船の設計に大きな影響を与えました。

乗員の負担軽減のため、操舵室は船体中央に配置され、全乗員分の衝撃吸収用ダンパー付き椅子が装備されました。これにより、波浪中の航行性能は予想を上回りましたが、機関室の吸気口位置は従来設計のままだったため、荒天時には大量の飛沫が機関室に侵入するという問題がありました。

また、工作船事案への対応として、操舵室は防弾性を強化。防弾板取付枠と防弾ガラスが採用されました。九州南西海域工作船事件では、この設計が効果を発揮し、銃撃を受けたにもかかわらず、操舵室内への貫通弾は防ぐことができました。しかし、アルミニウム合金製の船体は弾丸を貫通させる可能性がありました。

機関

みはし型は、高速航行と低速時の運動性能という相反する要求を満たす必要がありました。ネームシップの主機関は、アイドル回転数が定格回転数の約半分であり、従来のプロペラでは低速時の運動性に問題が生じる可能性がありました。そこで、巡視船として初めてウォータージェット推進器を採用。信頼性確保のため、高速航行時の推力はスクリュープロペラで担い、ウォータージェット推進器は補助的に使用される設計としました。

主機関は、4サイクル高速ディーゼルエンジン3基を搭載。両舷機（3500馬力）はスクリュープロペラを、中央機（2400馬力）はウォータージェット推進器を駆動します。国産（三菱重工業製）と欧州製（SEMT ピルスティク製、富士ディーゼルがライセンス生産）の2種類のエンジンが採用されました。

装備

兵装は、当初13ミリ単装機銃（ブローニングM2重機関銃）でしたが、後に目標追尾型遠隔操縦機能（RFS）付きのJM61-RFS 20mm多銃身機銃に換装されました。九州南西海域工作船事件では、JM61-RFSが使用され、不審船への威嚇射撃と正当防衛射撃が行われました。

同型船とその後

みはし型は4隻が建造されました。平成4年度計画以降は、船体長を46メートルに延長したびざん型に移行。2019年から代替艦の配備が始まり、2022年11月に最後の1隻「きりしま」が除籍され、全艦が退役しました。

登場作品

みはし型巡視船は、映画『LIMIT OF LOVE 海猿』や小説『日本国召喚』に登場しています。

参考文献

（参考文献は省略）

関連項目

あまみ型巡視船、高速高機能大型巡視船

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