みんないい娘

みんないい娘：ロカビリーからビートルズ、そして現代へ

「みんないい娘」(Everybody's Trying to Be My Baby)は、ロカビリーの歴史に輝く一曲です。1956年、カール・パーキンスによって発表されたこの曲は、実は1930年代中期にレックス・グリフィンが作曲した楽曲だとされています。パーキンスはロカビリー・ブームの中で成功を収め、その影響を反映した楽曲制作に励んでいました。1956年3月のレコーディング・セッションでは、「みんないい娘」を含む4曲が制作され、このセッションにおいてパーキンスは商業的な成功を強く意識し始めていたことがうかがえます。「みんないい娘」のイントロは、彼の代表曲「ブルー・スエード・シューズ」と類似しており、どちらも12小節のブルース形式という共通点があります。

パーキンス版「みんないい娘」は、当初は未発表でしたが、1958年のアルバム『ダンス・アルバム』に収録されたのち、『Original Golden Hits』や『ブルー・スエード・シューズ』などのコンピレーション・アルバムにも収録され、広く知られるようになりました。一方、1957年にはザ・ヨーク・ブラザーズが同曲を録音し発表していますが、作曲者としてウェッブ・ピアースとジョニー・マティスがクレジットされています。このように、この楽曲の起源と作曲者については、やや複雑な経緯があると言えるでしょう。

ビートルズのカバー：ジョージ・ハリソンのロカビリーへの愛

ビートルズは1964年10月18日、「みんないい娘」をわずか1テイクでレコーディングしました。リード・ボーカルは、パーキンスの大ファンだったジョージ・ハリソンが担当しています。彼の熱意が込められたボーカルは、楽曲に新たな魅力を与えました。ビートルズによるカバー・バージョンは、イギリスではアルバム『ビートルズ・フォー・セール』に、アメリカではアルバム『Beatles '65』に収録され、大きな人気を博しました。また、1976年のコンピレーション・アルバム『ロックン・ロール・ミュージック』にも収録され、長年にわたって聴かれ続けています。日本でも、1965年1月5日にシングル『パーティーはそのままに』のB面として発売されました。

ビートルズは1961年から1962年、そして1964年から1965年にかけて、「みんないい娘」をライブレパートリーとして演奏しました。1964年のクリスマス・ショーや、1965年のヨーロッパ、北アメリカツアーでも披露され、ハリスンの代表的なライブナンバーの一つとなりました。その後、「恋をするなら」にレパートリーが変更されましたが、1996年の『ザ・ビートルズ・アンソロジー2』、2016年の『ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル』には、1965年のライブ音源が収録されています。さらに、BBCセッションでの録音も残っており、『ザ・ビートルズ・ライヴ!! アット・ザ・BBC』に収録されています。

興味深いのは、ハリソンが1980年代半ばにパーキンスと共演し、その演奏が『Blue Suede Shoes: A Rockabilly Session』というアルバムに収録されていることです。これは、ハリソンがロカビリー、そしてパーキンスへの深い敬愛を生涯持ち続けていたことを示すエピソードでしょう。

多くのアーティストによるカバー：時代を超えた魅力

「みんないい娘」は、ビートルズ以外にも多くのアーティストによってカバーされています。例えば、リー・ロッカーは1999年のアルバム『Lee Rocker Live』に、ジョニー・キャッシュは2003年のアルバム『Unearthed』に収録しています。このように、この曲はロカビリーというジャンルを超えて、時代やアーティストの垣根を越えて愛され続けているのです。

まとめ：ロカビリーの魂とビートルズの息吹

「みんないい娘」は、複雑な歴史を持つ楽曲でありながらも、その魅力は時代を超えて受け継がれています。ロカビリーの原点を感じさせる力強いリズムと、ビートルズによって新たに吹き込まれた息吹は、今もなお多くの音楽ファンを魅了し続けているのです。この曲は、ロカビリーの歴史、ビートルズの軌跡、そして音楽の普遍的な魅力を語る上で、欠かせない一曲と言えるでしょう。様々なアーティストによるカバーも合わせて、その多様な解釈と魅力を堪能することができます。

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