みんなで決めよう「原発」国民投票
2011年3月に発生した東日本大震災と、それに続く東京電力福島第一原子力発電所の事故は、日本のエネルギー政策、特に原子力発電に対する社会全体の意識に大きな影響を与えました。こうした状況下で、原子力発電の今後について、広く国民や地域住民の意思を直接的に反映させるべきだとの考えに基づき、「みんなで決めよう「原発」国民投票」という市民団体が2011年5月25日に発足しました。
この団体は、原子力発電の是非を問う住民投票を全国各地で行うための条例制定を自治体に求めたり、国レベルでの原子力発電に関する国民投票を実現するための法制定を訴えたりする活動を主な目的としました。中でも、地方自治法に基づく住民の直接請求という形で、住民投票条例の制定を求める署名運動は、団体の活動の核となりました。
団体が推進した住民投票条例案の特徴として、まず原子力発電所の立地地域だけでなく、電力の主要な消費地である大都市圏、具体的には東京都や大阪市での実施を目指した点が挙げられます。これは、エネルギーを消費する側の住民にも、その供給方法について意思表示の機会を与えるべきだという考えに基づいています。また、投票に参加できる資格についても、従来の国政選挙の基準である「日本国籍を持つ20歳以上」という枠を超え、日本国内に居住する永住外国人や、さらに若い16歳以上の未成年者にも投票権を認めようとした点が、この条例案のもう一つの大きな特徴でした。
各地での活動は活発に行われました。
東京都では、「東京電力管内の原子力発電所の稼働に関する東京都民投票条例」の制定を目指し、2012年3月までに都内全域で署名活動が展開されました。集められた署名は精査を経て、2012年5月10日には32万3千筆が東京都知事に提出されました。しかし、当時の知事であった石原慎太郎氏は、住民投票による決定方式について、「危険であり、冷静に議会で議論すべき」との見解を示し、条例案に対して否定的な立場をとりました。この東京都での運動には、首都大学東京教授の宮台真司氏、文芸評論家の横尾和博氏、映画監督の小林聖太郎氏、元国立市長の上原公子氏、漫画家の千葉徹弥氏、会社経営者の桐原麗子氏（千葉麗子）、政治家の山本太郎氏など、様々な分野の著名人が請求者として参加しました。
大阪市でも同様に、「関西電力管内の原子力発電所の稼働に関する大阪市民投票条例」の制定を求める署名運動が行われました。集まった署名簿は2012年1月16日に大阪市内の各選挙管理委員会に提出され、審査を経て、2月14日には法定必要数を上回る55,248筆の有効署名が大阪市長に提出されました。これに対する当時の大阪市長、橋下徹氏の意見は否定的でした。彼は、市長選挙で既に脱原発の民意は示されていること、そして住民投票に約4億円もの経費がかかることは不適当であるという理由から、条例案に反対の意見を表明しました。提出された条例案は大阪市議会で審議されましたが、2012年3月27日、日本共産党を除く会派の反対多数により否決されました。また、投票資格者を20歳以上の日本国籍保持者に限定する修正案も提出されましたが、橋下氏が代表を務める大阪維新の会や公明党などの反対により否決され、結局、大阪市での住民投票条例制定に向けた運動は終結しました。
また、静岡県でも、中部電力浜岡原子力発電所の再稼働の是非を問う県民投票条例の制定を目指す署名運動が2012年5月13日から始まりました。この静岡県の条例案は、東京都や大阪市のものとは一部異なる規定を含んでいたとされています。
各地での住民投票条例制定を求める運動に加え、団体は原子力発電の是非を問うための国民投票を実施するよう、国に対して法制定を強く働きかけました。さらに、団体は東京都や大阪市を中心に、「学習会」と名付けた意見交換会を定期的に開催し、参加者が原子力発電に関する知識を深め、自由に意見を交わす機会を提供しました。
「みんなで決めよう「原発」国民投票」の活動は、東日本大震災後のエネルギー政策に関する社会的な議論の中で、専門家や政治家だけでなく、広く市民一人ひとりの声を政策決定に反映させるための直接民主主義的な手法を追求したユニークな試みでした。各地での住民投票条例制定請求は結果として成立には至りませんでしたが、電力消費地での住民投票の提起や、投票資格者の拡大といった先進的な提案は、市民参加のあり方について新たな問いを投げかけるものでした。この団体の活動は、原子力発電を巡る複雑な問題に対し、草の根レベルからの多様な意見を集約し、社会に提議しようとした重要な取り組みの一つとして位置づけることができます。
なお、この団体とは直接的な関連はありませんが、過去には新潟県の巻原子力発電所計画のように、1996年の住民投票の結果、原発建設が否決された事例も存在します。
この団体は、原子力発電の是非を問う住民投票を全国各地で行うための条例制定を自治体に求めたり、国レベルでの原子力発電に関する国民投票を実現するための法制定を訴えたりする活動を主な目的としました。中でも、地方自治法に基づく住民の直接請求という形で、住民投票条例の制定を求める署名運動は、団体の活動の核となりました。
団体が推進した住民投票条例案の特徴として、まず原子力発電所の立地地域だけでなく、電力の主要な消費地である大都市圏、具体的には東京都や大阪市での実施を目指した点が挙げられます。これは、エネルギーを消費する側の住民にも、その供給方法について意思表示の機会を与えるべきだという考えに基づいています。また、投票に参加できる資格についても、従来の国政選挙の基準である「日本国籍を持つ20歳以上」という枠を超え、日本国内に居住する永住外国人や、さらに若い16歳以上の未成年者にも投票権を認めようとした点が、この条例案のもう一つの大きな特徴でした。
各地での活動は活発に行われました。
東京都では、「東京電力管内の原子力発電所の稼働に関する東京都民投票条例」の制定を目指し、2012年3月までに都内全域で署名活動が展開されました。集められた署名は精査を経て、2012年5月10日には32万3千筆が東京都知事に提出されました。しかし、当時の知事であった石原慎太郎氏は、住民投票による決定方式について、「危険であり、冷静に議会で議論すべき」との見解を示し、条例案に対して否定的な立場をとりました。この東京都での運動には、首都大学東京教授の宮台真司氏、文芸評論家の横尾和博氏、映画監督の小林聖太郎氏、元国立市長の上原公子氏、漫画家の千葉徹弥氏、会社経営者の桐原麗子氏（千葉麗子）、政治家の山本太郎氏など、様々な分野の著名人が請求者として参加しました。
大阪市でも同様に、「関西電力管内の原子力発電所の稼働に関する大阪市民投票条例」の制定を求める署名運動が行われました。集まった署名簿は2012年1月16日に大阪市内の各選挙管理委員会に提出され、審査を経て、2月14日には法定必要数を上回る55,248筆の有効署名が大阪市長に提出されました。これに対する当時の大阪市長、橋下徹氏の意見は否定的でした。彼は、市長選挙で既に脱原発の民意は示されていること、そして住民投票に約4億円もの経費がかかることは不適当であるという理由から、条例案に反対の意見を表明しました。提出された条例案は大阪市議会で審議されましたが、2012年3月27日、日本共産党を除く会派の反対多数により否決されました。また、投票資格者を20歳以上の日本国籍保持者に限定する修正案も提出されましたが、橋下氏が代表を務める大阪維新の会や公明党などの反対により否決され、結局、大阪市での住民投票条例制定に向けた運動は終結しました。
また、静岡県でも、中部電力浜岡原子力発電所の再稼働の是非を問う県民投票条例の制定を目指す署名運動が2012年5月13日から始まりました。この静岡県の条例案は、東京都や大阪市のものとは一部異なる規定を含んでいたとされています。
各地での住民投票条例制定を求める運動に加え、団体は原子力発電の是非を問うための国民投票を実施するよう、国に対して法制定を強く働きかけました。さらに、団体は東京都や大阪市を中心に、「学習会」と名付けた意見交換会を定期的に開催し、参加者が原子力発電に関する知識を深め、自由に意見を交わす機会を提供しました。
「みんなで決めよう「原発」国民投票」の活動は、東日本大震災後のエネルギー政策に関する社会的な議論の中で、専門家や政治家だけでなく、広く市民一人ひとりの声を政策決定に反映させるための直接民主主義的な手法を追求したユニークな試みでした。各地での住民投票条例制定請求は結果として成立には至りませんでしたが、電力消費地での住民投票の提起や、投票資格者の拡大といった先進的な提案は、市民参加のあり方について新たな問いを投げかけるものでした。この団体の活動は、原子力発電を巡る複雑な問題に対し、草の根レベルからの多様な意見を集約し、社会に提議しようとした重要な取り組みの一つとして位置づけることができます。
なお、この団体とは直接的な関連はありませんが、過去には新潟県の巻原子力発電所計画のように、1996年の住民投票の結果、原発建設が否決された事例も存在します。
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