みんなのふるさと

山口県県民愛唱歌 みんなのふるさと

「みんなのふるさと」は、日本の都道府県の一つである山口県が1979年（昭和54年）に制定した県民愛唱歌です。この楽曲は、単に県を象徴する歌としてだけでなく、制定された背景にある特定の県民運動と深く関わって誕生しました。

制定に至る経緯は、1970年代に山口県が推進していた「あたたかいふるさとづくり」というキャンペーンにあります。この運動は、県民一人ひとりが自身の故郷を愛し、より良い地域社会を築き上げていくことを目指すものでした。その運動の機運を高め、県民の心に響くメッセージを伝えるためのキャンペーンソングとして、「みんなのふるさと」の制作が企画されました。

歌詞は、広く県民からの公募によって集められました。これは、「あたたかいふるさとづくり」運動が県民自身の参加を重視していたことと軌を一にするものです。多くの応募作品の中から、当時の徳山市（現在の周南市）出身であった国兼由美子氏の歌詞が採用されることとなりました。県民自身の言葉で表現された「ふるさと」への思いが、公式な愛唱歌の基礎となったのです。

作曲は、依頼を受けた山陽町（現在の山陽小野田市）出身の作曲家、田村洋氏が手掛けました。県内にゆかりのある作曲家がメロディーを創り出すことで、歌詞に込められた温かいメッセージと調和し、県民にとってより身近に感じられる楽曲となりました。

完成した「みんなのふるさと」は、当時、叙情歌などで広く知られていた歌手、芹洋子氏の歌唱によってレコーディングされました。この楽曲は、キングレコードからシングル盤として発売され、一般に流通することで、山口県民だけでなく、多くの人々にその存在が知られることとなります。

このシングル盤には、「みんなのふるさと」がA面曲として収録されており、そのB面曲には「夏みかんの花」という楽曲が収められています。「夏みかんの花」もまた、山口県の風物詩である夏みかんをテーマにした楽曲で、作詞を大倉芳郎氏、作曲を林伊佐緒氏が担当しました。両楽曲の編曲は、河野土洋氏が一手に手掛けています。

制定から長い年月が経過した現在も、「みんなのふるさと」は山口県内で様々な形で活用され続けています。最も身近な活用例の一つとして、山口県庁に電話をかけた際の保留音に採用されていることが挙げられます。これにより、多くの県民が日常的にこの愛唱歌を耳にする機会があります。また、山口県が主催する公式な行事や式典などにおいても、開会や開始を告げる序曲として演奏される場面が見られます。県民が集まる場でこの曲が流れることで、郷土への思いを共有し、一体感を醸成する役割を果たしています。

さらに、山口県統計協会が毎年発行している県民手帳においても、この「みんなのふるさと」は県のシンボルの一つとして紹介されています。同じく県の歌として位置づけられている、1963年（昭和38年）制定の「山口県民の歌」と並んで掲載されており、公式な県の歌としての地位が示されています。

これらの活用事例からも、「みんなのふるさと」が単なる過去の楽曲としてではなく、現在も県民の生活や県の活動に根差し、山口県のアイデンティティを形作る重要な要素であり続けていることが伺えます。

シングル盤に収録された楽曲の情報は以下の通りです。

みんなのふるさと
演奏時間：2分49秒
作詞：国兼由美子
作曲：田村洋
編曲：河野土洋

夏みかんの花
演奏時間：2分43秒
作詞：大倉芳郎
作曲：林伊佐緒
編曲：河野土洋

「みんなのふるさと」は、山口県の歴史、県民の思い、そして郷土への愛着を結びつける、心温まる愛唱歌として、これからも歌い継がれていくことでしょう。

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