もうひとつのジェネシス:ライヴ後編

もうひとつのジェネシス:ライヴ後編 (The Way We Walk, Volume Two: The Longs)

『もうひとつのジェネシス:ライヴ後編』は、英国を代表するプログレッシブ・ロックバンドであり、後にポップフィールドでも成功を収めたジェネシスが、1993年にリリースした5枚目の公式ライブ・アルバムです。この作品は、バンドが1992年に敢行した大規模な「ウィ・キャント・ダンス・ツアー」における熱気あふれるパフォーマンスを記録した音源を収録しています。アルバムの原題『The Way We Walk, Volume Two: The Longs』からも示唆されるように、本作は同時期にリリースされた姉妹作『ザ・シングル・ヒッツ・コレクション:ライヴ前編』（The Way We Walk, Volume One: The Shorts）と対をなす作品です。

前編が、バンドの比較的近年のポップ志向のヒット曲を集めた構成であったのに対し、この『ライヴ後編』では、ジェネシスがキャリアの中で生み出してきた、より演奏時間の長い、叙情的あるいはダイナミックな楽曲群に焦点を当てて選曲されているのが大きな特徴です。アルバムタイトルの『The Way We Walk』は、前編に収録されたヒット曲「I Can't Dance」と、本作に収められているプログレッシブ時代の代表曲「I Know What I Like (In Your Wardrobe)」という、収録曲の歌詞の一節から引用されています。

本作のハイライトの一つとして挙げられるのが、「オールド・メドレー」と題された、往年の名曲を繋ぎ合わせた壮大なメドレーです。1992年のツアーにおいて、ジェネシスはかつてライブで定番だった「In the Cage」を軸とするメドレーに代わり、この「オールド・メドレー」を新たな試みとして披露しました。このメドレーは、アルバム『トリック・オブ・ザ・テイル』からの「Dance on a Volcano」、『眩惑のブロードウェイ』からタイトル曲「The Lamb Lies Down on Broadway」、『ナーサリー・ライム』からの「The Musical Box」、そして『静寂の嵐』に収められたインストゥルメンタル曲「Firth of Fifth」の終盤パート、そして『ナーサリー・ライム』の「I Know What I Like (In Your Wardrobe)」といった、ピーター・ガブリエル在籍時代を含むバンドの歴史を彩る重要曲で構成されています。この「オールド・メドレー」は、本作CD版に収録されたバージョンと、同時期のアールズ・コート公演を収録した映像作品（DVDなど）に収められたバージョンでは、ごくわずかに内容が異なります。具体的には、CD版のメドレーに含まれる「Your Own Special Way」の短い断片が、DVD版では「Misunderstanding」のさらに短い断片に置き換わっています。

アルバムに収録された楽曲は以下の通りです。

オールド・メドレー: Dance on a Volcano〜The Lamb Lies Down on Broadway〜The Musical Box〜Firth of Fifth〜I Know What I Like (In Your Wardrobe) (1992年7月10日、ドイツ・ハノーヴァーにて録音) - 19:32
Driving the Last Spike (1992年7月13日、ドイツ・ハノーヴァーにて録音) - 10:18
Domino: Part One-In The Glow Of The Night/Part Two-The Last Domino (1992年7月10日、ドイツ・ハノーヴァーにて録音) - 11:21
Fading Lights (1992年7月13日、ドイツ・ハノーヴァーにて録音) - 10:55
Home by the Sea / Second Home by the Sea (1992年7月10日、ドイツ・ハノーヴァーにて録音) - 12:14
Drum Duet (1992年7月10日、ドイツ・ハノーヴァーにて録音) - 6:06
※この「Drum Duet」は、LPレコード盤には時間の制約から含まれていませんでした。

このライブ演奏に参加したメンバーは以下の通りです。

フィル・コリンズ (Phil Collins): ボーカル、ドラム、パーカッション
トニー・バンクス (Tony Banks): キーボード、バッキング・ボーカル
マイク・ラザフォード (Mike Rutherford): ギター、ベース、バッキング・ボーカル

そして、ライブツアーを支えたサポートミュージシャンとして、長年バンドと共に活動してきた以下の二人が参加しています。

ダリル・ステューマー (Daryl Stuermer): ギター、ベース、バッキング・ボーカル
チェスター・トンプソン (Chester Thompson): ドラム、パーカッション

商業的な成功という点でも、本作は特筆すべき成績を収めました。『もうひとつのジェネシス:ライヴ後編』は全英アルバムチャートで初登場1位を獲得し、合計9週間にわたってチャートに留まるロングセラーとなりました。アメリカのBillboard 200チャートでも最高位20位を記録しています。特に全英での1位獲得は、2023年現在に至るまで、ジェネシスがリリースしたアルバムの中で最後に首位に輝いた作品となっており、バンドの歴史における重要な区切りを示すライブ盤と言えるでしょう。長年のファンにとっては懐かしい名曲が、また新しいファンにとってはバンドの奥深い世界に触れる入り口となる、充実した内容のライブアルバムです。

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