もう一度…and then

角松敏生 13枚目のシングル「もう一度…and then」：多様なアレンジとセルフカバーが織りなす魅力

1988年10月21日、角松敏生はシングル「もう一度…and then」をリリースしました。この作品はオリジナルアルバムには収録されず、シングル限定での発売となりました。しかし、その後も様々な形でアレンジが加えられ、角松敏生の音楽活動の中で重要な位置を占める楽曲となっています。

まず注目すべき点は、このシングルに収録されている2曲の個性です。表題曲「もう一度…and then」は、角松敏生が作詞・作曲・編曲を手掛け、ホーン編曲にはJERRY HEYを迎えています。その演奏時間は9分29秒と、シングル曲としては長尺で、角松敏生の音楽的な広がりを十分に感じさせる楽曲となっています。ライブアルバム『voices under the water/in the hall』にはライブバージョンが、アルバム『Fankacoustics』にはアコースティックアレンジによるリテイクバージョンがそれぞれ収録されており、楽曲の多様な解釈が試みられています。

カップリング曲として収録されている「花瓶」は、角松敏生がプロデュースした中山美穂のアルバム『CATCH THE NITE|CATCH_THE_NITE』に収録されていた楽曲のセルフカバーです。角松敏生による作詞・作曲・編曲に加え、ストリングス編曲には大谷和夫が参加しています。この「花瓶」は、後にバラードベストアルバム『TEARS BALLAD』にも収録されましたが、エンディング部分のアレンジが変更され、フェードアウトからコーラスによるカットアウトに変更されています。さらに、1999年リリースのシングル「YOU'RE MY ONLY SHININ' STAR」や2000年リリースのアルバム『The gentle sex』にもセルフカバーが収録されており、「花瓶」という楽曲が角松敏生にとって特別な意味を持つ作品であることがわかります。アルバム『東京少年少女』の初回生産限定盤には、軽井沢大賀ホールで行われたTripodでのライブ音源が収録されています。

「もう一度…and then」は、本作よりアナログ盤に加え8cmCDシングルもリリースされるようになりました。興味深いのは、アナログ盤の「もう一度…and then」の演奏時間がCDシングル版より短く編集されている点です。アナログ盤では5分56秒となっており、CDシングル版とは異なる編集が施されていることがわかります。この違いも、音質や楽曲構成にこだわりを持つ角松敏生の姿勢を反映していると言えるでしょう。

このように、「もう一度…and then」は、単なるシングル曲にとどまらず、様々なアレンジやセルフカバー、そして異なるフォーマットでのリリースを通して、角松敏生の音楽的探求と、楽曲への深い愛情を伝える作品となっています。シングルとしての魅力はもちろんのこと、その後に行われた様々なアレンジや収録からも、この楽曲の持つ普遍的な魅力と、角松敏生というアーティストの幅広い表現力が伝わってきます。楽曲の持つ奥行きを理解するには、これらの様々なバージョンを聴き比べてみるのも良いでしょう。それぞれのバージョンで異なる魅力を発見できるはずです。角松敏生の音楽史において重要な位置を占める一曲と言えるでしょう。

もう一度検索