やくざ絶唱

やくざ絶唱：歪んだ愛の物語

1970年、大映が贈る『やくざ絶唱』は、増村保造監督がメガホンを取り、黒岩重吾原作の小説「西成山王ホテル崖の花」を映画化したものだ。92分のカラー作品で、シネマスコープの迫力ある映像美が特徴となっている。

本作の主題は、やくざの兄が実の妹に抱く、異常ともいえるほどの激しい愛情。その歪んだ愛情の深淵が、鮮烈な映像と重厚な演技によって描かれる。主演は勝新太郎が演じるやくざの兄・立松実、そして妹・立松あかね役には大谷直子が抜擢された。二人の演技は、物語に切なくも強烈な印象を与えている。

勝新太郎と大谷直子という豪華な主演陣に加え、脇を固めるキャストも錚々たる顔ぶれだ。田村正和、加藤嘉、荒木道子といったベテラン俳優から、若手実力派俳優まで、個性豊かな役者たちが集結している。それぞれの役柄が、物語に深みと奥行きを与え、観客をぐいぐい引き込む。

脚本は池田一郎が担当。増村監督独特の演出と相まって、登場人物たちの複雑な心理描写が見事に表現されている。特に、兄妹の葛藤や、周囲の人々の思惑が絡み合う場面は、緊迫感と同時に深い悲哀を感じさせる。

撮影は小林節雄、美術は矢野友久、音楽は林光と、映画界を代表するスタッフ陣が結集。彼らの卓越した技術と芸術性が、作品全体をさらに高みへと押し上げている。特に林光による音楽は、物語の感情を巧みに表現し、視聴者の心に響く。

『やくざ絶唱』は、単なるやくざ映画の枠を超えた人間ドラマとして高い評価を受けており、公開から半世紀以上経った現在でも、多くの映画ファンを魅了し続けている。その圧倒的な存在感と、忘れがたい物語は、観る者の心に深く刻まれるだろう。

スタッフ

企画：藤井浩明、林万夫
監督：増村保造
原作：黒岩重吾「西成山王ホテル崖の花」
脚本：池田一郎
撮影：小林節雄
美術：矢野友久
音楽：林光
録音：須田武雄
照明：渡辺長治
編集：中静達治
スチル：薫森良民

キャスト

立松実：勝新太郎
立松あかね：大谷直子
犬丸裕二：田村正和
犬丸泰助：加藤嘉
犬丸里枝：荒木道子
貝塚茂太郎：川津祐介
本田進：青山良彦
可奈江：太地喜和子
木山：早川雄三
石川：内田朝雄
宮沢：中条静夫
外山：橋本力
久井：平泉征
森川：中田勉
木山の客：伊東光一
朱実：米山ゆかり
トルコ風呂の客：武江義雄
トルコ風呂の女：甲斐弘子
バーテン：谷謙一
ホステス：三笠すみれ
警官：河島尚真
刑事：仲村隆
運転手：飛田喜佐夫
飲屋のお女将：花村泰子
飲屋の客：杉森麟
女中：川内悦子
花山組組員：中原健、荒木康夫
* 東風会会員：松山新一、九段吾郎

同時上映作品

『女の警察 乱れ蝶』（日活作品）

映像ソフト

2014年8月29日より、角川書店からDVDが発売されている。

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