やさしく歌って (アルバム)

『やさしく歌って』(Killing Me Softly)

『やさしく歌って』（原題：Killing Me Softly）は、アメリカを代表するR&Bシンガー、ロバータ・フラックが1973年に世に送り出したスタジオ・アルバムで、彼女にとってソロ名義では4作目にあたります。本作は、表題曲の爆発的なヒットとともに、ロバータ・フラックのキャリアにおいて重要な位置を占める作品となりました。

アルバム制作の背景

このアルバムのレコーディングは、収録曲によって異なる場所で行われました。表題曲である「やさしく歌って」はニューヨークのアトランティック・レコーディング・スタジオで録音されましたが、それ以外の楽曲はリージェント・サウンド・スタジオで収録されています。

アルバム全体のサウンド・プロダクションにおいて、ロバータ・フラック自身がアレンジの統括を担当しました。その上で、個々の楽曲の特性に応じて、ストリングスやホーンといった楽器パートには別途専門のアレンジャーが起用されています。これにより、楽曲ごとに緻密に練られたサウンドが実現しました。

本作のクレジットには、著名なジャズ・ミュージシャンであるラサーン・ローランド・カークに捧げられている旨が記されており、フラックの彼に対する敬意が伺えます。

各地での反響

本作はリリースされるやいなや、アメリカ国内外で大きな反響を呼びました。特にアメリカ本国では、主要な音楽チャートで素晴らしい成績を収めています。総合アルバム・チャートであるBillboard 200では最高3位、R&Bアルバム・チャートでは2位を記録。その売れ行きは、1973年8月にRIAA（アメリカレコード協会）によってゴールドディスクに認定され、さらに長きにわたる支持を受け、2006年1月にはダブル・プラチナに認定されるという形で証明されています。

音楽界で最も権威ある賞の一つであるグラミー賞では、本作は最優秀アルバム賞にノミネートされる栄誉を得ましたが、惜しくも受賞は逃しました。

アルバムに先行してシングル・リリースされた表題曲「やさしく歌って with His Song」は、世界的な大ヒットとなりました。アメリカのシングル・チャートBillboard Hot 100では見事1位を獲得し、R&Bシングル・チャートとアダルト・コンテンポラリー・チャートでもそれぞれ2位にランクイン。この楽曲の成功はグラミー賞でも高く評価され、最優秀レコード賞、最優秀楽曲賞、最優秀女性ポップ・ボーカル・パフォーマンス賞という主要3部門を受賞するという快挙を成し遂げました。

また、本作からはジャニス・イアンのカヴァー曲である「我が心のジェシ (Jesse)」もシングル・カットされました。こちらもBillboard Hot 100で30位、R&Bシングル・チャートで19位、アダルト・コンテンポラリー・チャートで3位と、良好なチャート成績を記録しています。

国際的な評価も高く、ノルウェーではキャリアで2度目となるアルバム・チャート入りを果たし、最高6位に3週連続でランクインしました。日本でもその人気は高く、オリコンLPチャートで最高16位を記録し、38週間にわたりチャート圏内に留まるロングセラーとなりました。

収録曲リスト

以下は本作に収録された楽曲のリストです。

Side 1

1. やさしく歌って (Killing Me Softly with His Song) (Charles Fox, Norman Gimbel) – 4:50
2. 我が心のジェシ (Jesse) (Janis Ian) – 4:03
ストリングス・アレンジ：エウミール・デオダート
3. ノー・ティアーズ (No Tears (In the End)) (Ralph MacDonald, William Salter) – 4:56
ホーン・アレンジ：アルフレッド・エリス
4. 少女 (I'm the Girl) (James Shelton) – 4:55
チェロ・アレンジ：カーミット・ムーア

Side 2

1. リヴァー (River) (Gene McDaniels) – 5:03
ホーン・アレンジ：ウィリアム・イートン
2. 愛の語らい (Conversation Love) (Terry Plumeri, Bill Seighman) – 3:43
ストリングス&ホーン・アレンジ：ドン・セベスキー
3. 君ほほえむ時 (When You Smile) (R. MacDonald, W. Salter) – 3:44
ホーン・アレンジ：ウィリアム・イートン
4. スザンヌ (Suzanne) (Leonard Cohen) – 9:44
* ストリングス・アレンジ：エウミール・デオダート

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