やせうま

大分県の伝統的な郷土料理、やせうま

やせうまは、大分県の代表的な郷土料理で、小麦粉を主原料とした平たい麺のような食べ物です。この料理は、ゆでた小麦粉を使った麺に、きな粉と砂糖をまぶしたもので、見た目は麺類に分類されますが、包丁を使わずに手でちぎる形で作られます。この独特の製法により、やせうまは「饅頭」ではなく、手作りの温かみを感じさせる料理となっています。

作り方としては、小麦粉を水で練り、手で引きちぎりながら形成され、その後ゆでられます。最終的にきな粉や砂糖で味付けされますが、地域によってははったい粉やあんこを使ったり、砂糖の代わりに黒砂糖を用いることもあります。やせうまは一般的にはおやつとして楽しまれ、そのまままたは冷やして食べるのが主流です。家庭料理として親しまれている一方で、別府市などの飲食店でも提供されており、学校給食にも登場するほど地域に根ざしています。さらに、スーパーマーケットや土産物店では、やせうま専用の生麺や乾燥麺が販売されているため、家庭でも手軽に作れるようになっています。

やせうまの由来

やせうまの由来については、いくつかの説が存在します。一つには、平安時代に貴族の若君が乳母の八瀬が作ったおやつを気に入り、「八瀬、うま」とねだったことに由来するという故事があります。また、元々は米粉で作られていた馬の形の団子が、小麦粉で作られることになり細長い平麺状に変わったため、「やせうま」と名づけられたとも言われています。さらに、馬の餌の小麦を人間が食べてしまった結果、「馬がやせてしまった」という説もあります。

このやせうまは、特に「妙蓮寺」で作られることが有名で、毎年お盆の23日には御施餓鬼会の行事として振る舞われており、これが習慣化して現在に至ります。この寺院には「やせうま発祥の地由来」の看板もあり、その伝承が現代に引き継がれています。

風習と行事

やせうまは、弘法大師（空海）の命日に当たる「お大師さま」で振る舞われたり、お盆や七夕には供え物としても使われます。お大師さまの日には、地域の住民がやせうまを受け取るために訪れることが伝統となっており、その際にはやせうまを塩味にして太く伸ばし、3本を一つに結んで提供することが特徴です。また、お盆には、特に8月14日にやせうまを仏壇に供え、黒砂糖を混ぜたきな粉で味付けを行うという風習も残っています。

変遷と派生商品

大分県では、やせうまとは別に、きな粉を水飴と砂糖で練ったあんを求肥で包んだ生菓子が「豊後方言銘菓 やせうま」として広く販売されています。このように、やせうまの文化は大分県内に限らず日本各地に広がっており、他県でも同様の名前を持つ食品が存在します。例えば、福島県や新潟県にもそれぞれ「やせうま」という名前の食品が存在し、その由来や形状は地域ごとに異なります。

やせうまは、その名のとおり、家庭の味や地域の文化を感じることができる料理です。手作りの温かみや、歴史的背景を持つこの郷土料理は、大分の風土とともに愛され続けています。

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