わが青春のイレブン

『わが青春のイレブン』

『わが青春のイレブン』は、1979年7月に公開された日本の青春映画です。この作品は、永島敏行が主演を務め、降旗康男が監督を担っています。映画は家城巳代治監督の遺稿となった同名のシナリオを基にしており、病床の彼が妻・家城久子の協力を得て書き上げたものです。このシナリオは後に小説としても出版され、集英社文庫に収められています。

制作は家城プロダクションが担当し、配給は東映セントラルフィルムが行いました。家城巳代治監督の死後、彼を追悼する形で映画化が急がれたとされ、降旗康男は師の弟子としてこのプロジェクトを引き受けました。映画には江原真二郎や中原ひとみ夫妻といった家城にゆかりのある俳優たちが出演し、作品に彩りを添えています。

物語は、高校のサッカー部に所属する若者たちの青春を描いています。主人公・矢吹健一（演：永島敏行）を筆頭に、片岡豊（山岡健）、谷川文夫（森谷泰章）がサッカー名門校で切磋琢磨する姿が描かれ、彼らの友情や坂口理恵（田中エリ子）への淡い想いも交差します。しかし、谷川が病に倒れたことで、矢吹は練習を辞め、不良の仲間に引きずられてしまいます。

出演者

映画には多くのキャストが名を連ねています。主演の永島敏行をはじめ、吉田次昭、山岡健、森谷泰章、柏原貴、田中エリ子などが出演。主人公たちを取り囲む多様なキャラクターが描かれ、物語に立体感を与えています。興味深いのは、歌手デビュー前の田原俊彦がギタリスト役で参加している点です。

制作背景と企画

映画制作の背景には、当時の日本映画業界の事情がありました。1970年代、アメリカのスポーツ映画が多く公開され、日本でもその流れを汲んでスポーツ映画の制作が試みられていました。しかし、その多くは商業的に成功せず、スポーツ映画というジャンルはあまり受け入れられない傾向がありました。その中で、サッカーをテーマにしたこの作品が誕生しました。企画本部長の登石雋一は、この映画のテーマに共感した西崎義展プロデューサーとともに資金調達を行い、製作が決まりました。

監督の思い

降旗康男監督は、家城巳代治の意向を尊重しつつ、現代の高校生たちの青春を描くことに情熱を注ぎました。学校の部活動の厳しさや停学処分に繋がるような教育環境を織り交ぜることで、時代背景を意識した作品に仕上げられています。

撮影と音楽

撮影は1979年の春に行われ、主題歌には青山孝が歌う「季節の中の魚たち」が起用されました。また、ジャニーズ事務所からの出演者もあり、当時の流行を取り入れた作品となっています。地方の興行は限られており、特に東京都内では新宿東映ホールと五反田シネマでの上映となりました。

ソフト化

映画は公開当時にはビデオ化されず、2019年にはDVDが発売されました。時間が経つ中で多くのファンに支持され続けている作品です。

このように『わが青春のイレブン』は、サッカーという当時マイナーだったスポーツを題材にしつつ、若者たちの葛藤や友情を描くことで、多くの人々の心に影響を与えた作品と言えます。

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