わたしは目撃者

わたしは目撃者

『わたしは目撃者』は、1971年に公開されたイタリアとフランスの合作映画です。原題はイタリア語で「九つの尾を持つ猫」を意味する『Il gatto a nove code』、英語題は『The Cat o' Nine Tails』です。ダリオ・アルジェントが監督と脚本を手がけ、ジェームズ・フランシスカスやカール・マルデンが出演しています。本作は、アルジェント監督の初期を代表する作品群であり、原題に動物の名前が含まれることから『歓びの毒牙』（鳥）、『4匹の蝿』とともに、通称「動物三部作」の一つとして知られています。

ストーリー

物語は、元新聞記者であり現在は盲目であるフランコ・アルノが、姪のローリーと夜道を歩いている最中に、一台の車内で激しい口論を聞いたことから始まります。彼はローリーにその場にいた男たちの顔を記憶するように頼みます。その同じ深夜、ある遺伝子研究所に何者かが侵入する事件が発生。そして翌日、研究所の研究員であるカラブレジ博士が駅のプラットホームから突き落とされ、命を落とします。

新聞に掲載されたカラブレジ博士の写真を見たローリーは、彼が前夜の口論相手の一人であったことをフランコに告げます。この情報を得たフランコは、事件を記事にした新聞記者ジョルダーニに協力を求めます。ジョルダーニの伝手で、転落現場を撮影したカメラマンのリゲットに連絡を取ると、彼の写真には博士を突き落とす腕が偶然写り込んでいたことが判明します。しかし、リゲットは現像作業中に何者かに襲われ、絞殺されてしまいます。連続殺人の様相を呈する事件の解決のため、フランコとジョルダーニは危険を顧みず、共に捜査を開始することになります。二人は、研究所の謎や登場人物たちの複雑な人間関係を探る中で、犯人の正体に迫っていきます。

スタッフと製作

監督と脚本はダリオ・アルジェントが担当しました。製作はサルヴァトーレ・アルジェント。原案はダリオ・アルジェント自身に加え、ルイジ・コッロ、ダルダノ・サッケッティが名を連ねています。撮影はエリコ・メンツェル、編集はフランコ・フラティチェリが担当しました。そして、映画音楽界の巨匠、エンニオ・モリコーネが音楽を手がけ、独特の緊張感と恐怖を煽るスコアで作品世界を彩っています。

作品の評価と位置づけ

『わたしは目撃者』は、イタリアで公開されるや否や大ヒットを記録し、監督ダリオ・アルジェントの名声を確固たるものとした初期の重要作品です。視覚的なショック描写とサスペンスフルな展開を特徴とするジャッロ映画というジャンルにおいて、そのスタイルを確立する上で大きな役割を果たしました。特に、盲目の主人公が音の記憶を頼りに事件の真相に迫るという設定や、複雑に絡み合う人間関係と連続殺人のプロットは、アルジェント監督の非凡な才能を示すものです。また、「動物三部作」の中では、前作『歓びの毒牙』に続く二作目にあたり、次作『4匹の蝿』へと続く監督の作風の変遷を辿る上でも興味深い一作と言えます。

映像ソフト

本作は過去に複数の形態で映像ソフトが発売されています。初期にはカルチュア・パブリッシャーズやIMAGICAからDVDがリリースされましたがいずれも現在は廃盤となっています。2004年には『フェノミナ』製作20周年を記念したダリオ・アルジェント監督の代表作を集めた4枚組のDVD-BOXにも収録されました。その後、2012年にはホラー・マニアックスシリーズの一環として、HDリマスター版が発売され、クリアな映像で作品を鑑賞できるようになりましたが、こちらも現在は廃盤となっています。

このように、公開から長い年月が経った現在でも、アルジェント監督の初期傑作として多くのファンに支持され続けています。

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