アイアンドーム

アイアンドーム（Iron Dome）

アイアンドームは、イスラエルによって開発された高い防御能力を持つ防空システムであり、主にロケット弾やミサイル攻撃から都市や重要施設を守ることを目的としています。共同開発には、ラファエル・アドバンスド・ディフェンス・システムズとイスラエル国防軍が関与しています。

概要

アイアンドームは、発射範囲が4キロメートルから70キロメートルにわたる155mm砲弾やロケット弾、10キロメートル以内の無人航空機（UAV）や航空機に対して防空の役割を果たします。このシステムは全天候型であり、重要度の低い目標を攻撃対象から除外することで、ミサイルの消費を抑えることが可能です。2008年の時点で、15キロメートルの射程を持つロケット弾に対して、150平方キロメートルの区域を守れるとされていました。

アイアンドームの迎撃成功率は、2011年末には75%、2012年には80%、さらに6月には90%に達したと報告されています。これは、迎撃を試みた目標にのみ計算され、迎撃対象外のものは含まれません。また、このシステムは同時に2発のミサイルを使用して運用されることが一般的です。

開発の背景

イスラエルは、ハマースやヒズボラからのロケット攻撃に度々さらされており、これらの攻撃を防ぐための防空システムが急務とされていました。特に、2006年のレバノン侵攻では、市民33人以上がロケット弾の攻撃により犠牲になるなどの惨劇がありました。この経験から、早期にロケット弾を迎撃し、被害を未然に防ぐシステムの必要性が高まりました。

開発

2007年2月、イスラエルの国防相がラファエル社に対してロケット攻撃への対策としてのシステム開発を指示しました。2008年7月には初のミサイルテストが成功し、2009年の7月にはロケット迎撃テストに成功しました。その後、イスラエル空軍では大隊規模の部隊が編成され、2011年3月には初の部隊展開が行われました。

資金

アイアンドームの資金源はイスラエルの国家予算に加えて、アメリカ合衆国からの出資も含まれています。アメリカからは、2011年度に2億500万ドル、2012年度にはさらに6億8000万ドルの支援が約束されました。

構成

アイアンドームは、指揮ユニット、EL/M-2084探知/追跡レーダー、多連装ミサイルランチャーから成り立っています。これらのユニットは移動可能で、1台のレーダーに3台のランチャー、各ランチャーには20発のミサイルが装填されます。レーダーはイスラエル・エアロスペース・インダストリーズの子会社製で、ミサイルはラファエルが製造しています。

戦歴

2011年3月、アイアンドームは初めての実戦配備を行い、続くロケット弾攻撃に対して初の迎撃成功を収めました。以降、アイアンドームは南部イスラエルで展開され、ロケット弾に対する迎撃能力が確認されています。特に、2012年にはガザとの衝突が頻繁に発生し、迎撃成功率が非常に高まる中、迎撃システムの重要性が再確認されました。

問題点

アイアンドームは高コストという問題があり、1発あたりの費用が3万ドルから10万ドルとされています。2012年の8日間の戦闘では、数千万ドルが消費されました。しかし、その高い迎撃成功率により、経済的損失と比較しても許容範囲と認識する意見も存在しています。また、ハマースとの衝突は、攻撃の飽和状態を作り出すことがあり、アイアンドームにも限界があることが明らかです。

輸出

アイアンドームはその成果から、他国への輸出も注目されています。特に韓国、インドが関心を持っており、アメリカ合衆国も海外派兵時の防御力を強化するためのシステムとして評価しています。

アイアンドームは、今後も多様な状況に応じた防空システムとして進化していくことが期待されています。

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