アイスポットシクリッド

アイスポットシクリッド：生態、形態、人間との関わり

アイスポットシクリッドは、南アメリカのアマゾン川流域を主な生息地とする大型の淡水魚です。その最大の特徴は、尾びれの付け根にある、白く縁取られた黒い斑点（眼状紋）にあります。この斑点が、英名である「ピーコックバス（クジャクのバス）」の由来であり、和名にもなっているアイスポット（目の斑点）の由来でもあります。現地では「ツクナレ」と呼ばれ、古くから人々の生活と深く関わってきました。

形態

アイスポットシクリッドは、スズキ目シクリッド科キクラ属に分類される大型のシクリッドです。成魚の体長は種や個体差がありますが、最大で約80cmに達します。口は大きく、口角が眼の後端を大きく超えています。頭部は大きく、口吻と眼の間隔がやや離れているため、より大きく見えます。

幼魚は細長く、体側中央に1本の横帯が見られますが、成長とともに体高が高くなり、特に後頭部から背びれ直前にかけて背面が盛り上がります。雄では、この部分がさらに盛り上がり、こぶ状に突出することがあります。背びれは1つですが、中央部が大きくえぐれており、まるで2つに分かれているかのような独特の形状をしています。これはスズキやブラックバス、ハゼなどの背びれの形状と似ています。

体色は種によって多様ですが、一般的には黄褐色や黄緑色を帯び、黒い縞模様を持つものが多く見られます。しかし、最も共通の特徴は、前述した尾びれの付け根にある黒い眼状紋です。この模様は、アイスポットシクリッドという名前の由来であり、ピーコックバスという呼び名も、この模様をクジャクの尾羽根に見立てたものと言われています。

生態

アイスポットシクリッドは、アマゾン川水系などの、水の流れが緩やかな開けた水域に生息しています。主に中層から上層を遊泳し、時には物陰に潜んで待ち伏せし、餌となる魚を捕食します。視覚が非常に鋭く、光るものに強い反応を示すことから、獲物の鱗の反射光を感知して捕食していると考えられています。野生では、ほぼ魚類のみを食べており、他のスズキ目肉食魚のように、無脊椎動物や死んだ餌を食べることは稀です。

人間との関係

食用

原産地では、他の魚と同様に食用として漁獲されています。

釣魚

「バス」類の一種として、スポーツフィッシングの対象として人気があります。本来の生息地以外にも、グアム、フロリダ半島、ハワイ、東南アジアなど、温暖な地域に移入され、人気のある釣り対象魚となっています。動きの遅い餌にはあまり反応せず、ハードルアーなどの動きの速い疑似餌がよく用いられます。

観賞魚

アクアリウムにおいても人気のシクリッドです。5cm～10cmほどの若魚が流通しており、特にオセラリス種は東南アジアでの養殖が盛んなため、比較的安価に入手できます。しかし、美しい色彩を発現した野生個体も人気があります。

闘争心が強く遊泳性も高いため、飼育には広い水槽と、適切な同居魚選びが重要です。また、生きている魚以外には興味を示さないため、人工飼料や死餌への餌付けには時間がかかり、中には一生餌付かない個体もいます。

構成種

アイスポットシクリッドは、キクラ属に分類され、かつては6種が知られていましたが、2006年には未成魚と成魚の色彩や鰭条数、鱗数の違いから9種が新たに記載され、合計15種に細分化されました。同じ種であっても、生息地域によって色彩や模様に大きな違いが見られます。

代表的な種として、キクラ・オセラリス（体長60cm）、キクラ・テメンシス（体長80cm以上）などが挙げられます。キクラ・テメンシスは、体側に白い斑点が入るタイプが人気で、ゲームフィッシングでは斑点の有無によって呼び名が違う場合もあります。その他、キクラ・インターメディア、キクラ・オリノセンシス、キクラ・モノクルス、キクラ・ニグロマキュラータなど、様々な種が存在します。2006年に新たに記載された種も多数存在します。

参考文献

Cichlidae - Froese, R. and D. Pauly. Editors. 2008.FishBase. World Wide Web electronic publication. www.fishbase.org, version(09/2008).

もう一度検索