アイスランドの軍事とは？意味をやさしく解説

アイスランドの軍事

アイスランドは、アメリカ合衆国とロシア連邦を結ぶ最短経路の真下に位置する戦略的に重要な国ですが、独自の軍事力を持っていません。この記事では、アイスランドの安全保障政策の歴史的経緯と現状について解説します。

9世紀頃からアイスランドへの定住が始まり、初期には部族間の闘争が繰り広げられました。13世紀にはノルウェー、14世紀にはデンマークの支配下に入ります。1874年にデンマークから自治を開始し、1918年にはアイスランド王国として独立しましたが、軍隊は設立されませんでした。

第二次世界大戦では中立を宣言しましたが、1940年にイギリス軍がアイスランドを占領。その後、アメリカ軍が駐留し、1944年にアイスランド共和国として完全独立を果たしました。

戦後もアイスランドは軍隊を設立せず、1949年にNATOに原加盟国として参加。1951年から2006年までアメリカ軍を中心とするアイスランド防衛隊が駐留し、冷戦時代には重要な拠点となりました。2006年にアメリカ軍が撤退した後、アイスランドは国土警備および防衛目的機関の設立を発表しました。

アイスランドは軍隊を持たない代わりに、NATOへの加盟を安全保障の基盤としています。また、国際連合や欧州安全保障協力機構の活動にも積極的に参加しています。

アイスランド外務省は、平和維持活動のためにアイスランド危機対応部隊を派遣しています。この部隊は軍隊ではありませんが、警察や沿岸警備隊などから選抜された隊員がノルウェー陸軍で軍事訓練を受け、コソボやアフガニスタンなどに派遣されています。

2008年に設立されたアイスランド防衛庁は、外務省の傘下にあり、防空レーダーシステムを主体としています。領空の監視やNATOとの防衛協力・調整を行っています。

アイスランド沿岸警備隊は、1920年代に設立され、漁業保護を中心に活動しています。過去にはイギリスとの間でタラ戦争と呼ばれる衝突も発生しました。巡視船や航空機を保有し、哨戒・捜索救難活動を行っています。

アイスランド国家警察は、対テロなどを想定した任務を行う特殊部隊を保有しています。爆弾処理班や狙撃班などで構成され、一部はアフガニスタンにも派遣されています。

アイスランドは独自の軍隊を持たないものの、NATOとの連携や国際的な平和維持活動への参加を通じて、国際社会の安全保障に貢献しています。