アイソラー・ツアー

アイソラー・ツアー

アイソラー・ツアー（Isolar Tour）は、イギリスの音楽家、デヴィッド・ボウイが1976年に実施したコンサート・ツアーです。このツアーは、前衛的なサウンドを取り入れたアルバム『ステイション・トゥ・ステイション』の発表を受けて開催されました。ツアーの名称は「シン・ホワイト・デューク・ツアー」、「ステイション・トゥ・ステイション・ツアー」、「ホワイト・ライト・ツアー」といった別名でも知られています。

ツアーの特徴と論争

このツアーにおけるボウイは、アルバム『ステイション・トゥ・ステイション』のタイトル曲で登場する架空のキャラクター「シン・ホワイト・デューク（痩せた青白き公爵）」という人物像を体現しました。この時期のボウイは、極端なダイエットによる痩身、タキシードなどの洗練された衣装、そして冷ややかで貴族的な態度といったヴィジュアルイメージで観客の前に現れました。しかし、ツアー期間中には、彼の言動が大きな物議を醸すことになります。特に、一部のインタビューでアドルフ・ヒトラーやナチス・ドイツを擁護するかのような発言をしたとされること、そして、ファンに向けてナチス式敬礼を行ったとされる行為（ボウイ自身はこの説を否定しています）などが、メディアや大衆の間で激しい議論を巻き起こしました。

ライブパフォーマンスと記録

ツアーのセットリストは、主に『ステイション・トゥ・ステイション』からの楽曲を中心に構成されつつ、過去のヒット曲や代表曲も披露されました。例えば、1976年5月7日にイングランドのロンドンで行われたライブのセットリストは以下の通りです。これは特定の公演のものであり、ツアー全体のセットリストを示すものではありません。

アンダルシアの犬
ステイション・トゥ・ステイション
サフラジェット・シティ
フェイム
ワード・オン・ア・ウィング
ステイ
僕は待ち人
クイーン・ビッチ
火星の生活
5年間
デトロイトでのパニック
チェンジス
TVC 15 (ワン・ファイヴ)
ダイアモンドの犬

アンコール

愛しき反抗
ジーン・ジニー

このツアーの一部の公演は録音されています。特に、1976年3月23日にニューヨーク州ユニオンデールで行われたライブは、後の公式ライブアルバムとしてリリースされました。この音源は当初、『ライヴ・ナッソー・コロシアム '76』というタイトルで、2010年に発売された『ステイション・トゥ・ステイション』のスペシャル・エディションやデラックス・エディションの一部として初めて公式に世に出されました。その後、2016年にはボックスセット『フー・キャン・アイ・ビー・ナウ? 1974-1976』にも収録され、さらに2017年には単独作品として初めてリリースされています。

参加ミュージシャン

このツアーに参加した主要なミュージシャンは以下の通りです。

デヴィッド・ボウイ – ボーカル、サクソフォーン
カルロス・アロマー – リズムギター, バッキング・ボーカル、音楽監督
ステイシー・ヘイドン – リードギター、バッキング・ボーカル
ジョージ・マレー – ベースギター、バッキング・ボーカル
デニス・デイヴィス – ドラムス、パーカッション
トニー・ケイ – キーボード

アイソラー・ツアーは、ボウイのキャリアにおける重要な転換期であり、その音楽性だけでなく、パフォーマンスやキャラクター、そしてそれに伴う社会的な論争という点でも、後世に強い印象を残したツアーとして記憶されています。

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