アイナロ県

アイナロ県は、東ティモールの13県の一つであり、同国の南東部に位置しています。面積は797平方キロメートルで、2008年の推計によると6万2407人が暮らしています。県都は山岳地帯にある小さな町、アイナロです。

歴史的に見ると、ポルトガル領ティモール時代からこの地域には同様の行政組織が存在していました。しかし、1975年にインドネシアが占領すると、行政区画にいくつかの変更が加えられました。具体的には、トゥリスカイ地区がアイナロ県からマヌファヒ県に移管され、代わりにハトゥ・ウド地区がマヌファヒ県からアイナロ県に移管されました。さらに、2003年にはマペ＝ズマライ地区がコヴァ・リマ県に編入されています。

アイナロ県は、北はアイレウ県、南はマヌファヒ県、南西はコヴァ・リマ県、西はボボナロ県、そして北西はエルメラ県とそれぞれ接しています。県内は、アイナロ、ハトゥ・ウド、ハトゥ・ビリコ、マウビセの四つの地区で構成されています。

この地域は、水資源が豊富で土地も肥沃なため、農業が盛んです。ティモール海に面した海岸線を有している一方で、エルメラ県との境界には国内最高峰のタタマイラウ山（標高2960メートル）がそびえています。インドネシア占領時代には、この山岳地帯はゲリラ兵の潜伏場所となり、独立運動の拠点の一つとなりました。現在の東ティモール大統領であるシャナナ・グスマンも、この地域に潜伏していた一人です。

言語面では、東ティモールの公用語であるテトゥン語とポルトガル語に加えて、アイナロ県の人々はマレー・ポリネシア語派に属するマンバイ語も使用しています。宗教的には、カトリック教徒、プロテスタント教徒、そしてイスラム教徒が共に生活しており、多文化共存の様相が見られます。

アイナロ県は、その歴史的な背景、地理的な特徴、そして文化的な多様性において、東ティモールの中でも特に興味深い地域の一つと言えるでしょう。

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