シャナナ・グスマン

シャナナ・グスマン：東ティモール独立の英雄

カイ・ララ・シャナナ・グスマン（通称シャナナ・グスマン）は、東ティモールの政治家であり、同国の独立運動を主導した中心人物です。初代大統領、第3代首相を経て、現在は第7代首相を務める彼は、東ティモールの歴史において重要な役割を果たしています。

生い立ちと独立運動への参加

1946年 6月20日、当時のポルトガル領ティモール（現在の東ティモール）のマナトゥトで、教師の両親のもとに生まれました。ディリ郊外のイエズス会高校に進学するも、経済的な理由で中退。その後、様々な職業を経験し、公務員として働きながら夜間学校で学び続けました。1971年、ポルトガル陸軍での兵役を終えた後、ジョゼ・ラモス＝ホルタが率いる東ティモール独立運動に参加し、平和的な抗議活動に関わりました。

1974年、ポルトガルのカーネーション革命を機に、東ティモールでも独立の機運が高まりました。しかし、独立を巡って東ティモール独立革命戦線（フレティリン）とティモール民主同盟（UDT）の間で主導権争いが激化。混乱に乗じてインドネシア軍が侵攻し、東ティモールはインドネシアによる事実上の併合下に置かれることになります。グスマンはフレティリンの活動に積極的に参加し、後に報道担当官に就任しました。

インドネシア占領下での抵抗運動

1975年11月、フレティリンは東ティモールの独立を宣言しましたが、数日後にはインドネシア軍の侵攻を受けました。グスマンはインドネシアに対する抵抗運動に参加し、村々を回って支援を呼びかけました。1980年代初頭にフレティリンが敗北を重ねると、グスマンはフレティリンを離れ、中道的な団体を支援するようになります。1980年代半ばには、フレティリンの主要な対抗勢力リーダーとなっていきました。

1990年代初頭には、国外交渉やメディア対応に注力。1991年のサンタクルス虐殺事件を機に、グスマンは世界中のメディアから注目を集めることになります。しかし、その注目度の高さゆえに、インドネシア政府の主要な標的となりました。1992年11月、インドネシア軍による軍事作戦によって逮捕され、反乱、銃器不法所持、分離運動の罪で終身刑を宣告されましたが、後に20年に減刑されました。グスマンは刑務所内からも抵抗運動を続け、国連代表やネルソン・マンデラなど、多くの要人が面会に訪れました。

東ティモール独立と初代大統領就任

1999年、スハルト体制崩壊後、東ティモールで独立を問う国民投票が実施され、圧倒的多数が独立を支持しました。インドネシア軍は組織的な破壊工作を開始しましたが、国際的な圧力により東ティモール多国籍軍（INTERFET）が駐留。グスマンも釈放され、国連暫定行政機構（UNTAET）の幹部に指名されました。

独立に向けた動きが進む中、グスマンは東ティモールの統一と平和を訴え続け、事実上の指導者として国民からの支持を集めました。2002年に実施された大統領選挙では、フレティリンを除く9つの政党から支持を受け、見事当選。2002年 5月20日、東ティモールは正式に独立を果たし、グスマンは初代大統領に就任しました。しかし、大統領の役割は儀礼的なものであったため、グスマンはマリ・アルカティリ首相と対比されることが多くありました。

首相としての活躍

2007年、グスマンは首相を目指すことを表明。同年、東ティモール再建国民会議（CNRT）を結党し、党首に就任しました。同年の議会選挙でCNRTは第2党となり、ラモス＝ホルタ大統領から組閣を指示され、首相に就任しました。就任宣誓では「独立と国民の結束のため全力を尽くす」と述べました。

グスマンの首相としての業績は多岐に渡ります。彼は国家建設と国民の福祉向上に尽力し、インフラ整備や経済発展に力を注ぎました。2008年には、ラモス＝ホルタ大統領の暗殺未遂事件でグスマン首相の自宅も襲撃され、命の危険に晒される場面もありましたが、グスマンは国民の信頼を失うことなく、リーダーシップを発揮し続けました。

その後の活動

グスマンは、1999年に欧州議会からサハロフ賞、2000年にシドニー平和基金からシドニー平和賞、2002年には欧州評議会から南北賞を受賞しています。また、2006年には和解と許しをテーマにしたドキュメンタリー映画『ここに陽はのぼる — 東ティモール独立への道』に出演し、ナレーションを担当しました。

グスマンは日本とも深い関係があり、大統領就任前の2002年1月に東京と沖縄を訪問したほか、2004年と2009年にも日本政府の招聘で来日しています。そして、2023年5月に行われた東ティモール総選挙では、CNRTが過半数の議席を獲得し、同年7月、グスマンは2度目の首相に就任しました。

シャナナ・グスマンは、東ティモールの独立という大きな目標を達成するために、その生涯を捧げた人物です。彼の不屈の精神と卓越したリーダーシップは、東ティモール国民だけでなく、世界中の人々に勇気と希望を与え続けています。

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