アイビーボウル

概要

アイビーボウル（Ivy Bowl）は、1989年から1996年にわたり、日本の地で開催されたカレッジフットボールの国際交流試合です。アメリカ合衆国の名門校が集まるアイビーリーグの選抜チームと、日本の学生選抜チームが対戦しました。このシリーズはエプソンが協賛を務め、日米の学生アスリート間の技術交流と、日本のフットボールレベル向上を目的としていました。

日本の学生選抜チームは、当初は日本大学フェニックスを率いた名将・篠竹幹夫氏が第6回大会まで指揮を執りました。その後、第7回大会からは関西学院大学ファイターズを率いていた伊角富三氏が監督を引き継ぎました。

歴史

アイビーボウルの歴史は、日米間の実力差を痛感する幕開けとなりました。第1回大会では、ウィリアム・アンド・メアリー大学が関東を主体とした日本学生選抜に対し、73対3という大差で圧勝します。これは、1977年にブリガムヤング大学が関西学生選抜を71対0で破って以来となる、日米学生試合での70点差ゲームでした。この試合で日本選抜はパスを一本も成功させることができず、ウィリアム・アンド・メアリー大学はランプレーで平均20ヤード以上を獲得するなど、攻撃力・守備力ともに圧倒的な差を見せつけられました。この初戦の観客数は若者を中心に1100人でした。

第2回大会では、日本学生選抜が善戦の兆しを見せます。ハーフタイムには10対14と僅差で折り返しました。クォーターバック（QB）の宇田川健治選手がパス37回中20回成功、208ヤードを獲得するなど奮闘。複数のQB合計でもパス50回中24回成功、275ヤード獲得、2つのタッチダウン（TD）を奪う攻撃を見せましたが、4つのインターセプトを喫し、最終的には49対17で敗れました。この試合には、後にNFLでアシスタントコーチとなるジャド・ギャレット氏が出場しています。

第3回大会もアイビー選抜の優位は揺るがず、ランで338ヤード、パスで230ヤードを獲得したのに対し、日本選抜はラン45ヤード、パス175ヤードに留まり、47対10で敗戦しました。

第4回大会からは、体制が大きく変わります。これまで関東主体だった日本学生選抜に関西勢が加わり、全日本学生選抜として臨むことになったのです。これは1935年に全米軍と全日本が対戦して以来、実に56年ぶりの全日本学生選抜の結成でした。第4回アイビー選抜を指揮したのは、ハーバード大学ヘッドコーチのジョー・レスティック氏。彼はフィラデルフィア・イーグルスで活躍した元NFL選手であり、フィラデルフィア・フィリーズのマイナーリーグで野球選手としてのキャリアも持っていました。

第5回大会は、ダブルヘッダーという異例の形式で開催されました。第1試合ではウィリアム・アンド・メアリー大学を除いたアイビーリーグ選抜と、日本大学を除いた全日本学生選抜が対戦し、アイビー選抜が68対3で圧勝。この試合ではQBショーン・ナイト選手が33ヤードと76ヤードのTDパスを決めたほか、ランでも2TDを挙げる活躍を見せました。第2試合はウィリアム・アンド・メアリー大学と、OB選手も含めた日本大学フェニックスが激突。日大がフィールドゴール（FG）で先制するものの、ウィリアム・アンド・メアリー大学が4分足らずで3TDを挙げる猛攻を見せます。前半終了間際に宇田川健治選手がTDを奪い、ハーフタイムは28対9でウィリアム・アンド・メアリー大学がリード。後半、グレッグ・パーカー選手がフェイクパントからのランでTDを奪うなどリードを広げますが、日大も第4クォーターに山田喜弘選手から梶山龍誠選手へのパスTDを決め、試合終了間際には山口選手がFGを成功させ、35対19で試合は終了しました。特筆すべきは、日本大学がファーストダウン獲得数で29対17と相手を上回ったことです。この日の観衆は4万人を超え、大きな盛り上がりを見せました。

第6回大会では、アイビー選抜のQBとして出場したジェイ・フィードラー選手がMVPに輝きました。彼はパス13回中8回成功、159ヤード、3TDを記録。後にNFL入りし、60試合に先発出場するなどプロで活躍する選手でした。

第7回大会は接戦となりました。第1クォーターにアイビーが先制TDを奪うも、第2クォーターに日本がFGで追い上げます。その後、アイビーがインターセプトリターンTDを挙げてリードを広げますが、日本もディフェンスエンド（DE）の鈴木選手がファンブルリターンTDを決めるなど、粘り強く食らいつきました。しかし、ペンシルベニア大学のテランス・ストークス選手のTDで突き放され、20対10でアイビー選抜が勝利。この大会のMVPはコロンビア大学のタイトエンド、ブライアン・バセット選手で、7回のレシーブで124ヤードを獲得しました。アイビーのQBジェイミー・シュワルブ選手もパス成功率が高く、165ヤードを獲得しています。アイビーのディフェンスは特にラン攻撃を完璧に封じ込め、日本選抜のラン獲得ヤードを44回の試行でマイナス2ヤードに抑え込みました。

最終となる第8回大会では、コロンビア大学のランニングバック、ジョン・ハーパー選手がMVPを獲得。彼は14回のランで118ヤード、2TDを挙げる活躍を見せました。

アイビーボウルは8年間で幕を閉じましたが、日本の学生フットボール界にとって、世界トップレベルの選手たちと直接対戦し、その技術や戦術を学ぶ貴重な機会となりました。初期の圧倒的な差から、回を重ねるごとに日本選抜も奮闘し、特にダブルヘッダーとなった第5回大会の日大対W&M戦では、内容面で互角以上の部分も見せるなど、日本のレベルアップを示す一面もありました。このシリーズは、その後の日本のフットボールの発展に少なからず影響を与えたと言えるでしょう。

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