アイルランド国立交響楽団

RTÉ国立交響楽団

アイルランド放送協会（Radio Telefís Éireann、略称RTÉ）に所属するRTÉ国立交響楽団は、アイルランドの首都ダブリンを拠点に活動する、同国を代表するオーケストラです。この名称の他に、アイルランド国立交響楽団（National Symphony Orchestra of Ireland）としても広く知られています。

創設と発展

楽団は1948年に設立されました。その起源は、ダブリン・フィルハーモニー協会を発展させたもので、国立放送に所属していた弦楽奏者たちと、軍楽学校の吹奏楽団のメンバーが主要な母体となりました。当時のアイルランドは第二次世界大戦において中立の立場を保ち、大規模な戦禍を免れたため、経済的に疲弊していたヨーロッパ各地から多くの音楽家が避難あるいは集まっており、このことが楽団設立当初の団員確保を比較的容易にした背景として挙げられます。

発足当初は「アイルランド放送交響楽団（Radio Éireann Symphony Orchestra）」と称し、特定の常任指揮者を置かずに活動を始めました。ジャン・マルティノン（記念すべき初公演を指揮）やハンス・シュミット＝イッセルシュテットといった国際的に著名な指揮者たちが客演に招かれました。その後、1953年にはミラン・ホルヴァートが初代首席指揮者に就任し、1961年までの約8年間、楽団を率いました。同じ頃、放送局がテレビ放送を開始したことを機に、オーケストラの名称は「RTÉ交響楽団（RTÉ Symphony Orchestra）」へと改称されました。

ホルヴァート氏の後、ティボール・パウル（1961-1967年）やアルベルト・ローゼン（1969-1981年）が長期にわたり首席指揮者を務め、楽団の基盤を築きました。

国立オーケストラへ

1981年には、現在の主要な活動拠点であるダブリンの国立コンサート・ホールが完成し、オーケストラの新しい本拠地となりました。そして1989年、楽団は規模を拡大し、名称にも「国立（National）」を冠して「RTÉ国立交響楽団」へと改称し、現在に至る体制となりました。この時期には、コールマン・ピアース（1981-1983年）、ブライデン・トムソン（1984-1987年）、ヤーノシュ・フュルスト（1987-1989年）、ジョージ・ハースト（1990-1994年）といった指揮者たちが首席を務めました。

2000年代に入ってからは、ゲルハルト・マルクソンが2001年から2009年まで約8年間首席指揮者を務め、その後を2010年から2016年までカザフスタン出身のアラン・ブリバエフが引き継ぎました。そして2019年からはハイメ・マルティンが首席指揮者を務めています。

特筆すべき出来事として、2012年にアイルランド共和国大統領マイケル・D・ヒギンズ氏が、オーケストラの唯一の公式後援者となることが発表され、その権威を高めました。

録音活動と歴代首席指揮者

RTÉ国立交響楽団は録音活動も積極的に行っており、廉価盤で知られるナクソスレーベルから数多くのタイトルがリリースされています。また、RTÉが運営するクラシック音楽専門のラジオ局RTÉ lyric fmからも、特にアイルランド人作曲家による作品集を中心に、貴重な音源が多数発売されています。

歴代の首席指揮者は以下の通りです。

ミラン・ホルヴァート （1953年 - 1961年）
ティボール・パウル （1961年 - 1967年）
アルベルト・ローゼン （1969年 - 1981年）
コールマン・ピアース （1981年 - 1983年）
ブライデン・トムソン （1984年 - 1987年）
ヤーノシュ・フュルスト （1987年 - 1989年）
ジョージ・ハースト （1990年 - 1994年）
カスパー・デ・ロー （1994年 - 1998年）
アレクサンドル・アニシモフ （1998年 - 2001年）
ゲルハルト・マルクソン （2001年 - 2009年）
アラン・ブリバエフ （2010年 - 2016年）
ハイメ・マルティン (2019年 - )

RTÉ国立交響楽団は、アイルランドの音楽文化の中心的存在として、国内外でその名を知られています。

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